実現しなかった映画
タデウシュ・ルベルスキによれば、1957年にヴァイダはマリア・コトコフスカ(Maria Kotkowska)と共同で、シュチェチンで起きた実際の事件をモチーフに脚本を書いた。『Jesteśmy sami na świecie(世界に私達だけ)』は十代の少年が主人公で、妊娠中の友達を廃墟にかくまい、そこで出産を手伝うという話だった。物語全体が、当時流行していたマレク・フワスコ(Marek Hłasko)の小説を思わせる反抗的な雰囲気の中で展開する。
次の未完成のプロジェクトは、『Szosa zaleszczycka(ザレシュチキの道)』というタイトルだったが、脚本の段階で行き詰まった。1961年、『サムソン』の制作直前には、ヴァイダは歴史スペクタクル大作の実現を夢見ていた。しかし、『Krzyżacy(ドイツ騎士団の騎士)』も『Przedwiośnie(早春)』も、後に何度も映画化を試みたが、成功しなかった。1966年の夏にはいくつかのユーゴスラビアのプロジェクトに関心があった。中でも、ヴラディミル・デディイェルの未発表小説で、「フェルディナント皇太子暗殺の社会的要因」(ルベルスキ)について書いた『サラエボ1914』に注目していた。
その後、『すべて売り物』の制作中、監督はカジミェシュ・ブランディスに『Piękne uśmiechy dnia(この日の美しい笑顔)』の脚本執筆を依頼した。同作家のエッセイ『Rynek(市場)』のプロットを発展させたものになるはずだった。「成功が期待された。離婚した歯科医の女性と、既婚者である役人の男性とのロマンスは、共産主義時代の日常を痛烈に描いているだけでなく、悲劇的な世界像も浮かび上がらせる。そこでは、役人の息子で、情熱にあふれた、障害のある高校生だけが一筋の光だ」(ルベルスキ)。
1970年、監督は現代的な恋愛映画を撮る予定だった。仮タイトルを『Studium przypadku(ケーススタディ)』とした脚本の執筆は、スタニスワフ・マントゥジェフスキ(Stanisław Manturzewski)が担当した。「ワルシャワの大学受験に失敗した地方出身の青年が、学生演劇で活躍する彼女に引けを取るまいと、精神病院で看護師として働き始める。そこで現代生活の緊張に耐えられなかった素晴らしい人々、つまり患者たちに質問をしていく」(ルベルスキ)という物語になるはずだった。しかし、脚本は完成しなかった。
イレネウシュ・イレディンスキ(Ireneusz Iredyński)の短編「Armelle(アルメル)」を基にした脚本による映画も実現しなかった。ヴァイダは長編テレビ映画を計画していたが、テレビ局は提示された4つの企画から『白樺の林』を選んだ。
『Piłat i inni(ピラトと他の人々)』(ミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』がモチーフ)を撮る前にも、別の頓挫したプロジェクトがあった。ヴァイダは、ピエル・パオロ・パゾリーニの映画『奇跡の丘(*原題は「マタイによる福音書」の意)』に着想を得て、1966年に脚本を書いた。「最初の場面は1945年、逃避行中の素朴な若い女性マリアが、年配の男性ユゼフ(ヨセフ)の保護の下、爆撃を受けた駅舎でキリストを産む。二十数年が過ぎ、現代のイエスが弟子たちに囲まれて登場する。ピョトル(ペトロ)は直情的なボディビルダー、ヤン(ヨハネ)は長髪の歌手で、ユダシュ(ユダ)はテレビのレポーターである」。1970年、ドイツ人がこの企画に関心を持った。『I.N.R.I』の脚本はヤヌシュ・グウォヴァツキ(Janusz Głowacki)とマチェイ・カルピンスキ(Maciej Karpiński)が書いた。しかし、勝ったのはブルガーコフだった。
1979年、ヴァイダはリシャルト・カプシチンスキ(Ryszard Kapuściński)『皇帝(Cesarz)』の映画化を試みた。ところがマルツェル・ウォジンスキ(Marcel Łoziński)の脚本が検閲を通らなかった。別の実現しなかったアイデアは『Powołanie(召命)』で、シロンスクの神学校の学生が二年目以降に、鉱山あるいは製鉄所で一年間の研修を受ける義務について描いた。脚本はヤヌシュ・キヨフスキ(Janusz Kijowski)とエドヴァルト・ジェブロフスキ(Edward Żebrowski)が執筆し、学生たちはオルギェルト・ウカシェヴィチ(Olgierd Łukaszewicz)とイェジ・ラジヴィウォヴィチ(Jerzy Radziwiłowicz)が演じることになっていた。「実現できなかった映画の企画のうち、本当に後悔しているものはそう多くないが、この一本だけは今でも嘆いている」と監督は自伝の中で書いている(『映画と祖国と人生と...(Kino i reszta świata. Autobiografia)』)。