ポーランドでクリスマスを乗り切るには……
ポーランドで初めてクリスマスを過ごすことになった人に、朗報と注意報!何よりそのクリスマスは、ポーランドの人々の限りないあたたかさを感じる、もっとも忘れ難い経験になるだろう。一方、ポーランドのクリスマスの伝統には、前もって知らなければ、びっくり仰天するものもある。不要なストレスや失敗を避けるため、ぜひこのCulture.plの手引きを読もう。
ポーランドも時代の潮流、クリスマスの商業化と無縁ではないが、多くの古い伝統がよく守られ、ポーランドの人々は、それを受け継いでいくことに強い思いを持っている。クリスマスは、1年に二つある主要なカトリックの祭日の一つで(もう一つはイースター)、ポーランド人はほぼ皆、ポーランド的なクリスマスの祝い方は、彼らの文化のとても大切な一部だと考えている。そのためポーランドのクリスマスは、思わず感動する瞬間や慣習にあふれているが、よそからやってきた人には、ただびっくりしそうなものもある。
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クリスマスの食卓の空席、写真:Michał Kołyga / Reporter
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まず浮かんでくるのは、素朴な疑問だろう――クリスマスは家族団らんの日で、よそ者は参加できないはずなのに、なぜわざわざ、話題にする必要が?この疑問は、実は勘違いもいいところ。ポーランド人は、とびきりのおもてなしの精神で知られているが、12月の半ばともなると、それが信じられないレベルまでパワーアップする。クリスマスは絶対にひとりで過ごしてはいけないという強い信念に突き動かされ、ポーランド人は親戚、友達や知っている人、はたまたクリスマス当日、通りをひとりでうろついている知らない人に至るまで、誰もがひとりで過ごさないように目を光らせることが、彼らの神聖な義務だと考えている。
Culture.plの外国人の同僚は、毎年、平均10ヶ所から招待を受け、そのどれもが真心のこもった素敵なものだと、口をそろえて言う。クリスマスの招待を、自分の家族と一緒に過ごす、またはもう他の家族から招待を受けていること以外の理由で断った日には、もはや人間でないとみなされるだろう。そのため、ポーランドでクリスマス・シーズンを過ごすのであれば、ばったり出会った、少し世話を焼きすぎる傾向のあるポーランド人家族の、名誉あるゲストになる可能性が非常に高い。古いことわざに、「お客さんが家に来たら、神様もやって来る」(Gość w dom, Bóg w dom)とあるが、これを何より証明する時期がクリスマスだ。
万が一、招かれなかったとしても心配はいらない。ポーランドのクリスマスでは、あたたかい場所を求めてまださまよっているかもしれない、かわいそうな人のために、どの家にも必ずひとつ空席がもうけられている。この伝統はすごい。クリスマス・イヴ、運試しに、どこかの家の扉をノックしてみよう。おそらくすぐに家の中、ご馳走へと招かれ、あたたかいもてなしを受けるだろう。
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ゲストを待つばかりのクリスマス・イヴ、写真:Lech Gawuc / Reporter
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さて、誰かの家族と一緒に「クリスマスを過ごす」招待を受けたら、それは12月24日のクリスマス・ディナーへの招待だと考えてよい。世界のほかの地域とは違って、ここポーランドでは「ヴィギリヤ(wigilia)」として知られるクリスマス・イヴがお祝いの中心。家族全員が集まり、ともに食事をしてプレゼントを贈り合い、そのほかたくさんの楽しいことが行われる日だ。
言われた通りの時間に訪ねて、最初の1時間か2時間、何も起こらなくても、驚かないこと。夜空に一番星が現れるまでは食卓につかないのが、伝統的な決まりだ。東方の三賢者をキリスト生誕の地へと導いた、ベツレヘムの星に敬意を表してのことという。ディナーが始まるのを待ちきれない子どもたちはたいてい、窓ガラスに鼻先をくっつけて、一番星が空に輝き始めるのを、今か今かと待っている。
ポーランド人は、クリスマス(12月25日)とその翌日(「クリスマス2日目」と呼ばれるが、お祝いとしては3日目で、見ての通り、ポーランドのクリスマスの数え方は謎だ)も祝う。ただ、通常はこの二日間には、24日のように盛大なディナーは用意されない。他の街に住む家族を訪ねたり、遠い親戚に会ったり、またはただ、のんびりゆったり、いちばん近しい家族と一緒に、ポーランド中で愛されている定番クリスマス・ヒット作『ホーム・アローン』を見たりする時だ。
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シルヴェステル・ヘンチツキ(Sylwester Chęcicki)監督の映画『Kochaj albo rzuć (愛するか、見捨てるか)』(1977)スチル写真、写真:Polfilm / East News
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公式なクリスマスのドレス・コードはないので、唯一のアドバイスとしては、クリスマスを一緒に過ごす予定の家族が伝統をどれくらい重んじるか、その度合いに応じて、装いもよりフォーマルにしよう。クリスマス・セーター〔ツリーやトナカイ、雪だるまなどのクリスマス・モチーフを大々的に編み込んだ、いわゆる「ダサかわいい」セーター〕を着る伝統はポーランドにはないが、「外国からやって来た珍しいお客さん」という立場を生かして、試しに着ていくのもよいだろう。きっと子どもたちが大喜びする。
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クリスマス・ウエハースを分かち合う様子、写真:Foka / Forum
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この伝統は、あらかじめ簡単なルールを知っておかないと、まごつくかもしれない。テーブルにつく前に、家の主人がオプワテク(opłatek)と呼ばれる、小麦粉と水で作られ、司祭によって前もって祝福された白いウエハース〔聖餅の一種〕を皆に配る。それをすぐに食べてはいけない。その代わり、その場にいる人に誰かまず、近づいて「ハッピー・クリスマス」を願い(親しい人であれば、もっと具体的な願いでよい)、相手のオプワテクのかけらを割って、その人にも、自分のオプワテクのかけらを割ってもらおう。ここで、相手からもらったかけらを食べてよい。そうしたら次の人のところに行って、同じことを繰り返すのだ。キスしたりハグしたり、ひと通り全員と願いを交わしたら、まだ残っている自分のウエハースを食べ、着席しよう。
この和気あいあいとした儀式は、キリストが「最後の晩餐」で弟子たちとパンを分かち合ったことを思い起こすもの。ご馳走をひたすら食べ続けるマラソンが始まる前、クリスマスの夕べを一緒に過ごす人たちに何か素敵なことを言う、絶好の機会も作ってくれる。
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ポルチーニ茸のラヴィオリ入りのバルシュチュ、写真:Bartłomiej Kudowicz / Forum
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ポーランドのクリスマスでまず知っておくべきは、招待する側が、なんと12種類の料理を用意するという伝統だ。そう、12種類、それもなんでもよいわけではない。これはただたくさんという言葉では言い表せない量で、伝統のおかげで、クリスマス・ディナーが終わる頃には誰もが、まったくもって(太字にせざるを得ないぐらい)満腹になる。
ポーランド人としては、これらはみな、素晴らしいご馳走と言いたいところ。ただ、余計なお世話と叱られるのを覚悟で、どんな珍しい料理が待ち受けているのか、またそれを味わう前にしておくべき心構えを、ちらっと紹介しよう。
まずはポーランドの誇るスープ。ポルチーニ茸のラヴィオリが入ったバルシュチュ(barszcz)〔ビーツの赤い色が美しい、澄んだスープ。クリスマス・イヴのバルシュチュには、出汁に肉ではなく、もどした乾燥キノコや魚のあらを使い、そのキノコが「ウシュカ(uszka)」つまり「小さな耳」と呼ばれるラヴィオリの具となる〕、またはキノコのスープ、どちらかを選ぶよう勧められるだろう。いずれも森で採れる野生のキノコが材料、と聞くと不安に思う人がいるかもしれないが、心配は無用。ポーランド人はキノコ狩りの名人で、子どもであっても、食べられるキノコと毒キノコを見分けることができる。だから安心して、スープが美味しいことにびっくりすればよい。きちんと下ごしらえして調理されたビーツは甘い。近所のヒップな店のヴィーガン料理でたまにあるような、やけに重い、土っぽい後味が来るのは今か今かと怖がる必要はない。
「クリスマス・愛憎物語」が始まるのはここ、魚料理。主人公は、ニシンのサワークリーム和えと2種類の鯉料理(クリスマス・イヴ風とユダヤ風)〔クリスマス・イヴ風は、塩・胡椒、レモン汁で調味した鯉の切り身に、小麦粉、卵、細かいパン粉で衣をつけ、バター等でソテー。ユダヤ風は、玉ねぎとバター、クローブ、ブイヨンで炒め煮にした切り身にレーズンとレモン汁、アーモンドスライス入りのソースをかける〕だ。正直に言って、新参者にはびっくりするキャストだろう。ニシンはヨーロッパの他の国々でもかなり好まれる魚だが、サワークリームをまとっているのを見るのは稀。塩味の効いた生のニシンと、クリームベースのソースを組み合わせるのが許されるかどうかは、控えめに言っても、意見が分かれるところだ。
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クリスマス・イヴの鯉ソテー、写真:Bartłomiej Kudowicz / Forum
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鯉に至っては、事態はさらに面白くなる。ポーランド人の間でも、鯉の料理としての価値となると、かなり分断されている。かなりの脂があり、淡水魚なので泥臭く、おまけにたくさんの小骨があって、食べるのに一苦労だ。一方、他の魚にはないその独特の味は、他に経験できる機会がまずないので、思いきって試す価値はある。たいていの子どもたちは嫌がり、「鯉の味を分かるようになるには、もっと大人にならないとね」と、上から目線でよく言われる。
ここで、身の毛もよだつ注意事項がある。鯉はできる限り新鮮な状態で調理した方がよい。ということで、長年、ポーランド人は鯉を手に入れたら、自分の家のバスタブを生け簀にして、12月24日まで(1日程度)飼うという風習を育んできた。この光景にびっくり仰天する外国人の情報は、ポーランド関連のルポにはどこでも見受けられ、バスタブで泳ぐ鯉の写真も有名になった。
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クリスマス用の鯉の世話をする少女、1980年代、写真:Chris Niedenthal
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クリスマスのピエロギ〔厚めの小麦粉の皮で具を包み、ゆでたり焼いたりする、ポーランドを代表する餃子のような料理〕の具はたいてい乾燥キノコだが、これは純粋に美味しい料理で、食べて実際にお腹がいっぱいになる、貴重なひと皿だ。なんといっても、鯉(小骨がありすぎる)でお腹を満たすことはできないだろうし、次に出てくる料理は口に合わないかもしれない。というわけで、ピエロギが出てきたら、その瞬間をけっして逃さないように!
キャベツが嫌いな場合、ザワークラウトの煮込みや、ゴウォンプキ(gołąbki)つまりポーランド語で「小鳩ちゃん」(鳩肉が使われるわけではなく、形以外は、鳩とは何の関係もない)として知られるロールキャベツ〔普段の具はひき肉とお米だが、クリスマスには乾燥キノコ、マッシュルームやソバの実が入る〕は遠慮しよう。煮込んだザワークラウトの独特の匂いはよく、「クリスマスの匂い」とも言われる。
クリスマスに出される3つのデザートのうち、2つのデザートの主要な原料が……なんとケシの実だ、と想像できた人はいるだろうか?幸い、クティア(kutia)〔小麦の実を煮てナッツやレーズン等とともに蜂蜜で調味したもので、主にポーランド東部で作られる〕とマコヴィエツ(makowiec)〔ケシの実ペーストのフィリングをイースト生地で巻いて焼いたケーキ〕は、ポーランド人に限らず万人受けする、とても美味しいデザートだ。では、12種類のリストの最後に載っているものは……?ポーランドのジンジャーブレッド、ピェルニク(piernik)だ!心の拠り所とでも言える懐かしい味に、ほっとできるだろう。
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ナッツ・リキュール(nalewka orzechowa)、写真:Jakub Orzechowski
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ポーランドの伝統では、クリスマス・ディナーでお酒は供されないが、家族の好みによって例外はある。ほどよい量のワインが出されることが多く、もしかしたら、ニシンと一緒に(「魚が泳げるように」という諺にしたがって)ウォッカが現れるケースもあるだろう。めったに見られないが、まったくないわけではない。ただ、自分でお酒を持参したり、ウェルカム・ギフトとして持っていくのは危険だ――伝統を重んじる家族の場合、この件はきわどい。
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ロマン・ザウゥスキ(Roman Załuski)監督の映画『Głód serca(心が欲するままに)』(1988)スチル写真、写真:Polfilm / East News
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誰がなんと言おうと、クリスマスには誰もがプレゼントを期待している。ポーランドのクリスマス・ディナー・パーティでは、プレゼントは魚料理とピエロギの間あたり、または子どもたちが待ちきれず不満を言い出した場合には、もう少し早い段階で贈られる。言うまでもなく、この伝統の原動力は彼らだ。
子どもたちは、プレゼントを用意して皆の家に届けるのはサンタクロースだと言われて育ち、そこまで純粋でなくなる10歳頃まで、それを信じている。ポーランド人が、プレゼントを持ってきたのは誰か、自分の名前をけっしてカードに書かないのはそのためだ。親類のためにこれぞというプレゼントを必死に探し出したとしても、それを伝えるためにできるのは、その人をちょっとした隙に脇に連れて行き、耳にささやいて教えることくらいだ。
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ワルシャワ市内でクリスマス・キャロルを歌う合唱隊の一例、写真:Tomasz Adamowicz / Forum
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クリスマスのもっとも美しい慣習のひとつが、聖歌をともに歌うこと。外国人にとっては残念だが、ポーランドで歌われる曲目は非常にたくさんあり、若干、圧倒されるかもしれない。すべての曲に加わることはできないだろうが、いくつか(「きよしこの夜」など)のメロディは国際的なバージョンと同じなので、ここぞとばかりに歌ってほしい。お祝いに参加しようという熱い音楽的な努力に、ポーランド人はきっと喜ぶはずだ。
さあ、これでポーランドのクリスマスを祝う準備もすっかり整ったはず。美しい伝統と、ポーランド人と過ごすあたたかい時間を、心ゆくまで楽しもう!
執筆:ヴォイチェフ・オレクシャク(Wojciech Oleksiak)、2016年11月24日
日本語訳:柴田恭子(Yasuko Shibata)、2023年12月14日