ポーランド料理案内
先祖代々受け継がれてきた食材で作る秘伝のポーランド料理は、近年、事実上無名の存在からヨーロッパの新星へと躍り出た。フランス料理やイタリア料理のような長年愛されてきた料理に比べ、ポーランド料理の大きな利点は、マスタードの鋭い辛味、発酵食品、豊富なうま味など、予想外の味の幅広さにある。
ポーランドもファーストフード化に免疫があるわけではないが、今日まで平均的なポーランド人は、キノコやベリー類、先祖伝来のレシピについて、シャーマンのような知識を持っている。このためポーランド国内で、新鮮でおいしい郷土料理を入手するのは難しくないが、外国でポーランド料理に挑戦する人は、ぜひ大胆に独自のレシピを試してみてほしい。主な材料のほとんどは、店で入手が難しくても、家で簡単に作ることができる。
Culture.plのポーランド料理ガイドを最大限に活用するには、最も食欲をそそるトピックを選択してください…よだれが出てきましたか?スマチネゴ!(Smacznego! *ポーランド語で「おいしく召し上がれ」「食事を楽しんでね」といった意味)
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『新ワルシャワ料理(Nowa Kuchnia Warszawska)』,写真:Polona(ポロナ・デジタルライブラリ)/ポーランド国立図書館
1682年に出版されたポーランド最古の料理本、スタニスワフ・チェルニェツキ(Stanisław Czerniecki)の『Compendium Ferculorum(料理大全)』を見ると、この4世紀の間に大きな変化があったことがわかる。この本には次のような壮絶な指南が載っている:
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「生きた雄鶏を捕まえ、ワインビネガーを漏斗で喉に流し込み、縛って5時間吊るし、きれいに毟って、焼くなり、好きなように調理する。」
このような初期の段階でも、ポーランド料理に特徴的な要素がいくつか見られる。第一に、外国からの影響の多さである。これは当時のポーランドの文化の多様性を考えれば驚くに値しない。
実際、ポーランド料理の要となる味は基本的に東方から来ている。11世紀以降のポーランド料理は、アジアのスパイスだけでなく、クリミアの影響を受けたものも多く見られた。その後、中世にユダヤ人がポーランドに到来したことで、さらに味の融合が進んだ。
ルネサンス期にはポーランド王と外国の女王の婚姻により、その国々の特産品がポーランドにもたらされた。ボナ・スフォルツァ(Bona Sforza)は、ジグムント1世スタルィ(老王)のイタリア人の妻で、野菜を愛したことでポーランド料理を変えたと言われている。現在もポーランドの店では、ニンジン、ネギ(リーキ)、パセリ、セロリの根、キャベツなどを束にしたものを「ヴウォシチズナ(włoszczyzna)」つまり「イタリアの食材」と呼んで販売している。
ポーランドがロシア、プロイセン、オーストリアに分割され、同化していったことは、今日のドイツ(またはオーストリア、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ)から来た人たちがお馴染みの料理に気づくには十分な痕跡を残している(いつも地元のひねりが加えてあるが)。
当然のことながら二度の世界大戦は、20世紀の大部分の間、ポーランド料理の栄光を休眠状態に置き、共産主義時代の料理については賛否が分かれている。
近年のポーランド料理の良し悪しを一言で言うのは難しいが、この10年間でポーランド料理のエネルギーと洗練度が飛躍的に増したことに異論はほとんどないだろう。
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ポーランドを代表する食べ物といえば、ピエロギだ。ジャガイモとチーズを詰めたピエロギ・ルスキェ(pierogi ruskie)は、ポーランド国内外で一二の人気を誇る。豚肉、牛肉、鶏肉、子牛などの肉を使ったピエロギも好まれ、ベーコンと一緒に食べることが多い。より洗練されたものでは、羊肉、鴨肉、ガチョウ肉などが入っているものもある。
コトレト・スハボヴィ(Kotlet schabowy)
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コトレト・スハボヴィ,写真:www.tastycolours.blogspot.com
ポーランドには、見た目も味もシュニッツェルに似た食べ物があるが、これはヴィーナー・シュニッツェル(*仔牛のカツレツ)とは別のものだ。コトレト・スハボヴィ(kotlet schabowy)は、おそらくヴィーナー・シュニッツェルの豚肉版として19世紀にポーランドに伝わった。
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発酵キュウリ,写真:イェンジェイ・ヴォイナル(Jędrzej Wojnar) / AG
ポーランド料理には発酵食品がつきものである。中でも特にキュウリの発酵漬物(ピクルス)やキャベツの発酵漬物(ザワークラウト)、これらの漬物から出る汁、ビーツのクファス(kwas *発酵液)、ジュル(żur *ライ麦の発酵液)がよく知られている。
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オスツィペク-山岳地帯で作られる伝統的な燻製羊乳チーズ,写真:マグダレナ・ヨドウォフスカ,トマシュ・ヨドウォフスキ(Magdalena & Tomasz Jodłowscy) / Forum
オスツィペクを作るのにはいくつかのものが必要だ:ポーランド山羊(polska owca górska)と呼ばれる特別な品種の羊、羊飼い、囲炉裏のある小さな山小屋、羊飼いの見習い、そして牧草地。
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ゴウォンプキには「小さな鳩」という意味がある。米とひき肉を白菜の葉で巻いたもので、トマトまたはキノコのグレイビーソースをかけて食べる。ゴウォンプキは様々な味のだし汁で煮込んだり焼いたりする。2日目から3日目に食べるのが一番おいしい。
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カシャンカ,写真:ロベルト・ソボチンスキ(Robert Sobociński)
カシャンカのレシピは地域によって異なるが、最も一般的なものは、ソバの実、血、内臓(肝臓、肺、皮、脂肪を含む)を腸のケーシングに詰めたもの。夏には、キェウバサ(kiełbasa)と一緒にバーベキューで食べることもある。
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燻煙中のキェウバサ,写真:ゼノン・ズィブルトヴィチ(Zenon Zyburtowicz)
ポーランドではキェウバサをはじめとするソーセージを簡単に手に入れることができる。平日に、パーティで、あるいはクリスマスやイースターに、ポーランドの冷製ハムやソーセージをカットしたものを、キノコのピクルス、キュウリのピクルス、西洋ワサビ、チフィクワ(ćwikła,刻んだビーツと西洋ワサビを和えたもの)、タルタルソース、マスタード、根野菜のサラダなどと一緒に食べるのが伝統的な食べ方だ。直火で焼いたものは、スープやシチューにもよく使われる。
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スープ用の発酵穀物粉はポーランドではおなじみのものだ。ジュレックはポーランド料理の中でも、とりわけ驚くべき、おいしい昔ながらのスープの一つである。スープは「ライ麦発酵液」を使って作られる。「ライ麦発酵液」とは、水、スパイス、ライ麦粉を自然に発酵させた液体のこと。各地で見られるこのスープは、数え切れないほどの地域バリエーションがある。
ナ・ズドロヴィエ!(Na zdrowie! *乾杯!)ポーランドの飲み物
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「Młody Ziemniak(ムウォディ・ジェムニャク *新ジャガイモの意味)」ウォッカ,写真:Polmos Siedlce(ポルモス・シェドルツェ)
ポーランドの代表的な飲料といえば、ウォッカ(ポーランド語では「ヴトカ(wódka)」)である。ポーランドでは、愛好家が絶賛する高級ウォッカがいくつか生産されている一方、一般のポーランド人も大人数の集まりやフォーマルな場で飲むためにウォッカを保管しておく傾向がある。共産主義時代には最も手に入りやすいお酒だったが、経済の変化に伴い、大小問わず多くの醸造所が誕生し、日常的にはビールが飲まれることが多くなった。
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ここ数年、クラフトビールへの関心が高まっている。「ピヴォ(piwo)」(ポーランド語のビール)には、ブロンドビールや黒ビール、低温殺菌していないビール、蜂蜜やその他のフレーバーのビール、ポーター、スタウト、ボック(ポーランド語でコジラク(koźlak))、小麦ビール(白ビール)など、あらゆる種類と大きさのビールが揃っている。数え切れないほどの地ビールがあり、バーテンダーやウェイターは喜んでその特徴を詳しく説明してくれるだろう。
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イグナツフ・シードル(Cydr Ignaców),写真:Cydr Ignaców
ポーランドはまた、第二のヨーロッパのシードル「El dorado」になるかもしれない。ポーランドでは毎年300万トンのリンゴが生産されており、これはスペインのブドウの生産量に匹敵する。良心的なポーランドの消費者は、リンゴの加工を最小限に抑えて商品化を目指す職人技のメーカーの品質を好む傾向がある。ポーランドのシードルを探すときは、大規模ブランドの大量生産品を避け、多種多様の逸品を見つけてください。
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第三回全国・食の祭典「2009年最優秀ポーランド・ナレフカ」コンテスト,写真:マレク・ラピス(Marek Lapis) / FORUM
ポーランドのもう一つの注目すべき製品ナレフカ(nalewka)は伝統的なアルコールで、果物だけでなく、ナッツやスパイスからも作られている。チェリー、ジンジャー、ジュニパー、ヘーゼルナッツ、パイナップルなど味は無限にある。ポーランド語を話さない人がボトルを購入する場合は、ナレフカの名前は味によって異なることに注意してほしい。安全のために、入手しやすいチェリーのリキュール「ヴィシニュフカ(wiśniówka)」を覚えておいてください。
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セップ茸のラビオリ入り赤バルシチ,写真:バルトウォミェイ・クドヴィチ(Bartłomiej Kudowicz) / Forum
ポーランドで最も華やかな食事といえば、間違いなく伝統的な12品のクリスマス・ディナーだろう。12という数字は、富、12人の使徒、1年の12ヶ月を象徴している。特定の料理は地域によって異なる場合もあるが、多くの料理は普遍的だ。例えば鯉は、バルシチ(barszczビートのスープ)やニシンなどと並ぶ定番料理の一つである。
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ハム、ソーセージ、卵、砂糖菓子の羊、西洋ワサビの入ったイースター・バスケット,写真:マチェイ・ゴツロン(Maciej Goclon) / East News
料理の観点から見れば、イースターも引けを取らない魅力と豊かさがある。ごちそうは燻製肉とハムで構成されるが、その中でもビャワ(白)・キェウバサ(biała kiełbasa)が中心的な役割を果たしている。
ビャワ・キェウバサは燻製ではない豚ひき肉のソーセージ(牛肉と仔牛肉を加えたもの)で、豚腸のケーシングで薄く覆われ、塩、胡椒、ニンニク、マジョラムで味付けされている。卵はありとあらゆる方法で提供され、チーズや酵母のケーキもたくさん焼かれる。
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シャルロトカ,写真:ピョトル・イェンズラ(Piotr Jędzura) / Reportret / East News
シャルロトカ、つまりアップルパイは年間を通じて人気がある。このデザートには何百ものレシピがある。ポーランド語の「シャルロトカ」という名前はフランス語、あるいは英語の「charlotte」に由来し、18世紀に遡って、パンを切ったものを型の内側に貼り付け、果物を詰めてオーブンで焼いた塊を意味した。
これはマリー=アントワーヌ・カレーム(Marie-Antoine Cârème)が発明したデザートで、19世紀にポーランドに伝わった。今日ポーランドのアップルパイは、通常、半クリスプまたはクリスプ生地をベースとする。中にはレーズン、シナモン、クローブが入っている。シャルロトカは今でもカフェやレストランのデザートメニューの定番で、ホイップクリームと一緒に温めて提供されることもある。
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ポンチュキはポーランドのドーナツだが、その味はこの地上の甘いものの頂点に立つおいしさである。平たい球形をしていて、油で揚げているので低カロリーとは言いがたい。
ドーナツのフィリングは、バラのジャム、リキュール、プリンなど様々だ。ポンチュキは一年中菓子店で見られるが、ホリデーシーズンの終わりの象徴でもある。四旬節の直前の木曜日、「脂の木曜日(tłusty czwartek)」には、ポーランド全土で何千万個ものポンチュキが食べられている。
マグダレナ・カスプシク=シェヴリオ(Magdalena Kasprzyk-Chevriaux)とマイ・ジョーンズ(Mai Jones)執筆の記事に基づく;2014年4月LBにより編集;2019年2月LDにより編集
日本語訳:秋山由衣、パヴェウ・パフチャレク(Paweł Pachciarek)2020年5月
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