解放の時
ヨアンナ・ハヴロットが手がけた衣装には、また別の役割が与えられている。十二単のそれぞれの層は、現代の女性たちの物語を紡ぐインスピレーションとして再解釈された。12の衣装のうち6点は、ヴォーギング・ダンサーたちによって解釈された。彼女たちは、身ぶりと装いによって女性性を演出するアーティストであり、ときにジェンダーの境界を拡張し、「ハイパーフェミニン」な存在として自己を表現する。もう6点は、大丸心斎橋店の日本チームによって選ばれた日本人女性たちのために仕立てられた。対象となったのは、ティーンエイジャー、ホステス、トランスジェンダー、高齢女性など、日本における多様な女性性のあり方を象徴する人々である。
アーティストであるハヴロットは、写真家ズザ・クライェフスカをプロジェクトに招き、これらの女性に自身のデザインによる「キモノ」をまとわせ、大阪の街中で撮影を行った。撮影場所としてあえて選ばれたのは、道路脇やゴミ捨て場の近く、ホテルの廊下といった、普段は目を留めず通り過ぎてしまうような、「中間的」で非象徴的な空間である。そうした誰のものでもないような場所で、彼女たちが自らの意味を見出すことができるようにしたのである。
日本における女性の社会的立場は、依然として欧州的な意味でのジェンダー平等とは距離がある。そのため、ハヴロットは女性たちがもともと着ている服を脱がせることを意識的に避け、その上から衣装をまとわせた。彼女たちのアイデンティティを損なうことなく、対話のなかで主体性を引き出したのである。ハヴロットは、彼女たちを自らのヴィジョンの「素材」にするのではなく、一人の人間として対等に向き合い、共に表現を創出する関係を築いた。そのささやかな姿勢の違いが、当事者にとっては深く感情に訴える体験となり、それは写真と映像の中に確かに刻まれている。
このプロジェクトは、ハヴロットにとって他者との距離を縮め、目には見えない「糸」によって私たちがつながっているという感覚を表現する試みでもある。ルポルタージュ、ドキュメンタリー、パフォーマンスの境界を横断する実験的な作品として、この展示は2025年5月31日から6月24日まで、日本の職人文化を長年支えてきた大丸心斎橋店で公開される。ヨアンナ・ハヴロットは、同百貨店の4つのショーウィンドウと7つの階段踊り場スペース、さらに8階のギャラリーを含む空間全体を使ってインスタレーションを展開する予定であり、まさに大丸心斎橋店というラグジュアリー空間を掌握するかたちで展開される大規模なプロジェクトとなる。
本展示の舞台装置のひとつとして登場するのが、34点の大型のカーテンである。これらは、ヴォイチェフ・サドレイの作品に捧げられたものであり、同時にハヴロットのこれまでの作品群にも繰り返し登場してきた要素である。最も低層に位置する「赤のショーウィンドウ」では、布に描かれた巨大なヴァギナからマネキンたちが出てくるかのような演出がなされている。とばりや几帳といった布を用いた仕切りは、日本の住空間において古くから使われ、特に蒸し暑い夏季には通風のため、また、居住空間における親密さや私的領域を演出する手段として重宝されてきた。屏風や衝立は、移動可能な壁やインテリアの装飾としての機能も果たしている。
展示では、枠に貼られた和紙に絵が描かれた障子や、文字と絵が交互に展開される横長の絵巻物(特に10~12世紀にかけて栄えた)なども登場する。さらに、のれん(暖簾)も紹介される。のれんは、もともとは平安時代に住宅の入口に吊るされていた麻や綿の布であり、後世では店舗の看板代わりとしても使われるようになった。商家や飲食店が自社の屋号を紋やロゴにして染め抜き、来訪者を店内へと誘うための布として、今日まで継承されている。ヨアンナ・ハヴロットもまた、そのような布の演出を通して観客を自身の世界へと招き入れる。展示会場最上階のギャラリーでは、訪れた人々がキモノを着たマネキンたちのあいだを自由に移動できる空間が用意されている。あるマネキンは、大阪で撮影された映像を鑑賞しており、他のマネキンたちはテーブルに座り、アンジェリカ・マルクルによる赤い蝋の心臓が置かれたそのテーブルを囲んでいる。それらの心臓は、「感情の完全な露出(=心臓を皿に載せて差し出す)」を象徴している。さらに、あるマネキンは心臓を手に持ち、ガラス越しに大阪の街を見つめている。この都市は、そのまなざしを、果たして無視することができるのだろうか?
執筆:マグダレナ・カツァラク(Magdalena Kacalak)、
日本語訳:下村杏奈(Anna Shimomura)、2025年6月
参考文献
九鬼周造(1979)『「いき」の構造』 岩波文庫.
カー A.(2000)『美しき日本の残像』朝日文庫.
Kubiak Ho-Chi, B.(2006)(編). Japonia okresu Meiji. Od tradycji ku nowoczesności(明治期の日本――伝統から近代へ)NOZOMI.
Kubiak Ho-Chi, B.(2009). Estetyka i sztuka japońska. Wybrane zagadnienia(日本の美学と芸術について――選ばれた視点). Universitas.
Furmanik-Kowalska, M.(2024). Kultura Azji oczami artystek. Tożsamość kulturowa w sztuce współczesej(アーティストの視点から見たアジア文化――現代美術と文化的アイデンティティ). Wydawnictwo Tako.