デザイナー、ビジュアルアーティスト、コスチューム作家、ファッションブランド「HAWROT」のオーナーである、ヨアンナ・ハヴロット。彼女のデザインにおけるトレードマークは、日本文化を基盤にしつつヨーロッパのスタイルで表現された、現代的デザインの着物である。ハヴロットは「ファッションからアートへ」と自身が掲げる芸術哲学を軸に、アートの文脈でのファッション・デザインに取り組んでいる。
2008年よりデザイナーとして活動を始めたハヴロットは、東洋、特に日本からインスピレーションを受け、快適さとミニマリズムを追求する人物だ。彼女は自身の芸術哲学を「From Fashion to Art(ファッションからアートへ)」と表現し、実験的なデザインは日常の快適さと融合可能だとする「Wearable Art(身にまとうアート)」の考え方を大切にしている。ハヴロットにとって、一昔前まで日常的に人々が身に付けていたアジアの伝統的衣装は、まさに彼女の理念を具現化するのに適した手段なのである。
Embeded gallery style
display gallery as slider
ハヴロットは日本の美を取り入れつつ、同時にそれを現代ヨーロッパの大都市に合わせて作品の中で表現している。彼女にとって着物は、自らの創造性あふれるビジョンを形にするための最適なツールなのだ。これまで、さまざまなテーマに沿ったシリーズを企画し、自身が開発した布を用いた17のコレクションを発表している。一見、単純に見える服の型が、多くのアーティストたちとのコラボによって生み出されたデザインで深みを増している。これまでにラモナ・ナガプチンスカ(Ramona Nagabczyńska)、マウリツィ・ゴムリツキ(Maurycy Gomulicki)、アンジェリカ・マルクル(Angelika Markul)、ボヴニク(Bownik)とトメク・ヴィフロフスキ(Tomek Wichrowski)とと制作活動を行ってきた。コレクションのテーマとしては、身体性や官能性、フェティッシュ、ポップカルチャー、恐れ、メランコリーなどが挙げられる。
ハヴロットは、ポーランド国内外の芸術・文化関連施設と何十ものファッションアートプロジェクトを共同実施しており、ニューヨーク、東京、パリ、ベルリン、デュッセルドルフなどの海外都市にも進出している。2015年にポーランドの古都クラクフの日本美術・技術博物館Mangghaで行われた、オーケストラとの共演を取り入れたマルチメディアファッションショーや、2016年に琵琶湖ビエンナーレで実現したカシリー・ヴァンディンスキー(Kassily Wandinsky )とのコラボ企画は、分野の垣根を超えたハヴロットのプロジェクトの一例である。また、2018年に公開された映画『The Wall of Mexico(メキシコの壁)』(監督:マグダレナ・ズィザク、ザハリ・コトラー)の衣装担当を務め、2025年に日本で開催の大阪・関西万博で紹介される紹介されるアーティストの一人として、注目を集めている。
Embeded gallery style
display gallery as slider
2024年には、ヴロツワフ国立博物館にて個展「着物という体験――ヨアンナ・ハヴロットの芸術言語」を開催。370平方メートルの展示スペース、1,800メートルの布地を背景に、マウリツィ・ゴムリツキ、ソニャ・ヘンスラー(Sonia Hensler)、アンジェリカ・マルクル、ヴォイチェフ・イレネウシュ・ソプチク(Wojciech Ireneusz Sobczyk)、ホンザ・ザモイスキ(Honza Zamojski)といった選りすぐりのアーティストの作品に着想を得た着物コレクションを発表した。
ホリスティックなインテリアコンセプト「Hawrot Home(ハヴロット・ホーム)」もハヴロットのプロデュースだ。ポーランド・マゾフシェ地方の森の中に位置するこの家は、ポーランドのアーティストたちを紹介するギャラリー、また対話と共同活動を促進するための空間として活用されており、ハヴロットはこの場所をアーティスト向けのレジデンスとして提供している。
ハヴロットはポーランドのファッション雑誌から2003年度の「Doskonałość Mody(ファッション・エクセレンス)」賞を授与されており、ワルシャワの中心街にブティックを構えている。
執筆:カロリナ・スレイ(Karolina Sulej)、2015年7月(2025年4月12日改訂)
日本語訳:川本夢子(Yumeko Kawamoto)、2025年5月