海辺の三つ子の街トルイミャスト(グダンスク・グディニャ・ソポト)出身の7人組。ジャズの即興性、ファンクのグルーヴ、鋭いビート感を組み合わせたエクレクティックな音楽を奏でている。
「クラヴォでは、メンバーそれぞれが楽曲のサウンドについて意見を言うことができるよう常に心がけています。民主的でありつつも、仲間への礼儀は忘れないようにしています。」私がクラヴォの楽曲の制作方法について尋ねた時に、ピアニストのマリナ・ミデラ(Malina Midera)はこのように答えた。クラヴォは7人組であり、おまけにメンバーには3人ものピアニストがいるため、私の問いは妥当なものに思えた。
現在のクラヴォの編成を踏まえると、このグループの活動が、トルイミャスト出身のピアニスト、コンタンティ・コストカ(Konstanty Kostka)の2019年のソロ作品『フロンドラ(Flądra)』から始まったというのは信じ難い。彼のデビュー作は大部分において、サンプラーが使用されていた。しかし発売後まもなくグディニャの音楽レーベルCoastline Northern Cutsが、コストカに完全編成のアレンジを施したバージョンを発表することを提案した。この時コストカの仲間に加わったのが、冒頭でも語ったミデラ、パーカッショニスト兼キーボーディストのトマシュ・ラファルスキ(Tomasz Rafalski)、フルート兼ボーカルのアリツィヤ・ソプスティル(Alicja Sobstyl)、ベーシストのアルトゥル・シャルシャ(Artur Szalsza)とトランぺッターのカロル・トゥフシュ(Karol Tchórz)だった。こうしてクラヴォが結成された。
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クラヴォ。写真:Marius Dan Moga / 宣伝資料
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6人組(パーカッショニストのヤクブ・クシャノフスキ(Jakub Krzanowski)が加わったことにより現在では7人組である)のメンバーは、グダンスク音楽大学のメンバーで構成されていた。さまざまな経験や音楽的関心(エクストリーム・メタルからエレクトリック・アヴァン・ポップに至るまで)をもつ若い音楽家たちが集まった。彼らを結びつけた理由は、シンセサイザーのサウンドへの愛情、また電子音楽やヒップホップといった共通した音楽的背景である。彼らは次のように語っている。
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クラシックなアレンジ手法を、ビート感覚というフィルターを通して再解釈していると言えるでしょう。作曲するときにはよく、Abletonというソフト上でベースパートの打ち込みを作って、そのあとにそれぞれのパートを全員に割り振っていきます。ただこのサンプリング的手法は、制作過程そのものというよりも、クラヴォのスタイルやサウンドにおいて、重大な関係があります。私たちはそもそも、生の素材を扱うグループの仕事に慣れている楽器奏者またはソングライターであり、サンプラーやループで作品を作るビートメーカーではないのです。
このような珍しいグループ結成の経緯は、クラヴォにさらなるメリットをもたらした。まずはグループ名から見てみよう。ファンキーなクラビネットの使用が前面に押し出された『フロンドラ』の一曲目のタイトル『クラヴォ(Klawo)』は、グループ名として使われた。そして何よりもゼロから新たな楽曲を制作するのではなく、クラヴォは、自分たちでアレンジした『フロンドラ』の楽曲を演奏することで、すぐさまコンサート活動を開始できたのだ。これは、初期の段階でクラヴォのメンバーたちが活動のモチベーションを保つことができた理由の1つになった。反対に、楽曲に対する好反応やグループとしての出演を重ねていくことで、自分たちの新たな作品の制作へと駆り立てられていた。その新たな作品は、既に言及されたように、民主主義を尊重しながら制作された。クラヴォのメンバーたちは、誰もが制作の現場に自分のアイデアをもちこむことができる。メンバーの数だけ、作曲家がいるのだ。まさにスタイルがぶつかり、融合することで、最終的なグループのサウンドを作り出している。
もちろん、それはアイデアだけに留まるわけではない。メンバーがもち寄ったアイデアは、集合的な感受性と録音中の発展というフィルターを通される。さらに、このプロセスは、単なる楽曲の収録で終わるわけではない。デビュー作『クラヴォ』と、その1年後に発表されたコンサート盤を聞き比べるだけで、彼らの進化が続いていることを確信できる。彼らの進化が終わることはないのかもしれない
グダンスク・ルジク(グダンスク流のユルさ)
クラヴォはダイナミックなトルイミャストの音楽シーンの次世代の代表者たちである。トルイミャストの音楽シーンでは、ジャズの伝統に対して愛情をもちながらも、若者特有の奔放な自由さをもって向き合っている。グダンスクとその周辺地域出身の何世代にわたるミュージシャンを結びつけるのは、絶えることのないユーモアへのセンス(少なくとも肩の力の抜けたユルさ)と、その時々に起こるカオスに足を突っ込むことを恐れないエクレクティシズムである。クラヴォは、まさにこの潮流に位置づけられるが、彼らの音楽は学術的分類や主義主張のためのサウンドトラックではない。クラヴォのメンバーたちはこのことを自らよく理解している。
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この状況を表す専門用語「グダンスク・ルジク(グダンスク流のユルさ)」が存在します。創作過程におけるこのアプローチは、トルイミャストの音楽シーンに浸透していますが、メリットとデメリットの両方があります。メリットとしては、トルイミャストのアーティストたちが拝金主義のエゴイストになることなく、成功よりも良い仲間と面白い仲間と音楽を作ることの方が重要であると考えていることです。私たちの音楽シーンは、友達同士の協力関係によって成り立っているように思います。ライバル意識や嫉妬心を感じることはあまりありません。対して「グダンスク・ルジク」のデメリットというのは、あまりに多くの創作エネルギーが計画の段階で燃え尽きてしまっていることです。ある集中した創作期間の後に、一時は熱狂的になりますが、いざ真剣に取り組まなければならない時には、たいていの場合、仕事へのやる気を失ってしまっているのです。
しかしクラヴォのメンバーが、グダンスクの音楽シーンについて考えながら演奏を行うことは、彼らにメリットをもたらしていることに疑いはない。その音楽シーンの存在感が強まるほど、そのシーンの代表者たちが注目を集めることは容易になるからだ。その証拠として、Immortal Onion、Lasy、Nene HeroineやArtificialiceの成功が挙げられる。面白いことに、彼らの音楽的傾向は大きく異なっているが、そのメンバーたちには(郵便番号以外に)ジャズ的素養が共通している。もしクラヴォがジャズの伝統に手を伸ばすならば、クラヴォにとって最も馴染み深いものとして、間違いなくジャズとファンクの融合が挙げられるだろう。クラヴォのメンバーたちは、ポーランドの偉大なジャズマンであるミハウ・ウルバニアク(Michał Urbaniak)やズビグニェフ・ナミスウォフスキ(Zbigniew Namysłowski)らの作品における探求活動に対して特別な敬愛の念を抱いている。この二人は、ジャズとファンクのミックスに、ほんの少しのポーランドのフォークロア的要素を加えたのだ。自らが生まれ育った環境で、ファンキーなグルーヴを探求する中で、クラヴォのメンバーたちはポーランドのポピュラーミュージックの歴史も深く探求し、求めていたグルーヴをハリーナ・フロンツコヴィアク(Halina Frąckowiak)、Breakoutやクシシュトフ・クラフチク(Krzysztof Krawczyk)の楽曲の中に見出した。
クラヴォのミュージシャンたちは、このようなアーカイブ的探求を勧めているが、クラヴォと最も近しい関係にある作品は、ポーランドのTropical Soldiers in ParadiseやP.Unityのような同世代のグループのアルバムに見出すことができる。そのミュージシャンたちとクラヴォは、大編成と「グルーヴ音楽に対する非正統的なアプローチ」といった点で共通している。この文脈において、U Know Meによって発表されたコンピレーションアルバム『ジャズの世代(Genaracja Jazz)』についても触れなければならない。そのアルバムの一曲目はクラヴォの楽曲だった。アルバムのタイトルが示しているように、この作品で選ばれたアーティストたちの共通点の一つは年齢であり、選ばれた全てのグループのメンバーは、当時30歳未満だった。もう一つの共通点は、アーティストたちのジャズ的な背景と、他の音楽ジャンルへの寛大なオープンさだった。しかしクラヴォは、このアルバムの「ジャズ」という言葉のために、自分たちが「ジャズの世代」にふさわしい存在であるのか疑問に感じている。
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私たちは、編成や即興ソロといった複数のジャズの要素を用いていますが、自分たちをジャズバンドとは考えていません。ジャズを学んだことにより、比較的複雑なアレンジの作曲や演奏を可能にする特定の手法(譜面の書き方、和声の知識)を活用することは簡単になりました。一方でスタイルとしては、「ジャズの世代」で選ばれた多くの素晴らしいバンドに比べて、私たちは現代のメインストリームのジャズとは、距離があると思います。
ヒップホップと、クローゼットの中から出てきたもの
このような背景を踏まえれば、クラヴォのデビューアルバムの宣伝に、P.Unityのイェンジェイ・ドゥデク(Jędrzej Dudek)の発言の引用が用いられていたことには、誰も驚かないはずだ。「クラヴォは古いクローゼットを覗き込んだ。古いといっても、大昔のものではない。彼らの先祖には、ハービー・ハンコックと、70年代ジャズのグルーヴの発見者たちがいる。」さらにドゥデクは、同様に重要な影響を与えているのが、自宅録音されたビートテープやローファイの精神で作られた楽曲であると指摘している。そのためクラヴォのデビュー作の参照点として挙げられるのが、ミーターズ、J・ディラであり、またマック・デマルコでもある。イギリスの『Bandcamp Daily』のある記事で、ヤクブ・クネラ(Jakub Knera)がクラヴォについて熱狂的に書いている。
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7月に発売されたクラヴォのデビューLPは、天才的で、素晴らしいメロディーで満たされている。若いイギリスのジャズシーンを彷彿とさせる、脈打つファンキーなサウンドを奏でるが、ポーランドラジオとテレビの黄金時代に制作された作品にも見事に溶け込むようなアレンジも誇っている。
このイギリス的な影響が重要であると思われる。若いポーランドのジャズマンや、またはジャズの教育を受けた作曲家たちの関心が、ニューヨークではなく、よりロンドンの方へと向いていることが示されている。究極的には、このイギリスの影響を受けたアーティストたちに、既に述べたImmortal Onionや、またヴロツワフ出身のsneaky jesusやEABS(そしてその全ての変種)を加えることができる。
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私たちはCykada、シャバカ·ハッチングスのプロジェクトやVels Trio、そして 決して忘れることはできない二人組のユセフ·カマール(Yussef Kamaal;2017年に解散)といったロンドンの一部のバンドを好んで聞きます。ただそれは私たちの音楽に対する参照点や文脈の一つに過ぎません。 [...] ロサンゼルスのシーン(サム·ゲンデルとサム·ウィルクスの素晴らしい作品)や、シカゴのスタジオInternational Anthem(マカヤ·マクレイヴン、最高に美しいResavoirのデビュー作)、音楽レーベルAthletic Progressionのスカンディナヴィア派についても触れなければなりません。これらの音楽には、何か共通の思考が存在していて、それをサブジャンルとして定義するのなら、私たちもそれを一定程度代表しているし、その発展を関心をもって見守っています。アーティストとして、またリスナーとして。
以上で挙げられた音楽シーンや作品群に共通点を探してみると、フリージャズやアヴァンギャルドではなく、メロディーの追及がそれに当たるのかもしれない。またヒップホップの影響もその一つといえるかもしれない。または彼らの共通点はジャズの進化の一段階、または派生と言えるかもしれない。これらの特徴を踏まえると、EABSのキャリア当初のように、この音楽シーンの代表者たちである、今日存在しないトルイミャストのUNDADASEAや、またJakub Bryndalやmihi x.n.d.r.として活躍するラッパーと共に、クラヴォがステージに出ることも何ら不思議ではない。
クラヴォのメンバーの話では、近いうちに彼らが参加する新たなコラボレーションが期待できそうだ。さらにクラヴォは2枚目のスタジオアルバム制作の仕上げに取り組んでいる。
執筆:ヤン・ブワシュチャク(Jan Błaszczak)、最終改訂2024年7月11日
翻訳:岡田葵(Aoi Okada)、2025年9月