アニメポータルCartoon Brewはこれを「史上最高にクリエティブなオープニング」と絶賛し、ソハは「カウチギャグ」をこれまでに制作した錚々たる作家たちと肩を並べた。バンクシーBanksy、ギレルモ・デル・トロGuillermo del Toro、ビル・プリンプトンBill Plympton、シルヴァン・ショメSylvain Chometといった面々である。
複数のエピソードで構成された『Kahlil Gibran’s The Prophet(ハリール・ジブラーンの預言者)』では世界中から10人のアニメ作家が招待されたが、ソハはその一人であった。声優はリーアム・ニーソンLiam Neeson、サルマ・ハエックSalma Hayek他が務めた。
カミル・ポラクKamil Polak
ワルシャワ美術大学絵画学部およびウッチ映画大学撮影学部アニメ科を卒業。『Narodziny narodu(国民の創生)』は2002年ヴィースバーデン(ドイツ)の映画祭で第三位を受賞。『Świteź(シフィテシ湖)』は複数の重要なアニメ映画祭で受賞、中でもアヌシーの映画祭では初監督作品に贈られるJean-Luc Xiberras(ジャンリュック・ジベラ)賞を受賞した。
この映画はアダム・ミツキェヴィチAdam Mickiewiczのロマン主義バラードの翻案で、謎の中世都市が底に沈む神秘の湖を描く。『Świteź(シフィテシ湖)』は破壊、奇跡、善悪の永遠の戦い、信仰、希望についての黙示録的物語である。ワルシャワのアニメスタジオHuman-Arkで制作された。
『Polityka(ポリティカ)』誌のコラムでズジスワフ・ピェトラシクZdzisław Pietrasikは『Świteź(シフィテシ湖)』を以下のように評した:
「ポラクの映画はたった20分だが、その制作には7年かかった。その効果は画面上に現れている。何より視覚面がすばらしく、アニメ映画史上の最高峰に匹敵する。」
クシシュトフ・ヴァルリコフスキKrzysztof Warlikowskiの演劇『Dybuk(ディブク)』(2003)のためのアニメ映像を手がけ、ユダヤ人シナゴーグの動く絵を作成した。2008年オスカー受賞アニメ、スージー・テンプルトンSuzie Templeton監督『Piotruś i wilk(ピーターと狼)』の共作者でもある。またヴォイチェフ・ヴァフシュチクWojciech Wawszczykと共同でアニメシリーズ『Kacperiada(カツペリアダ)』の監督を務めている。
ナタリア・ブロジンスカNatalia Brożyńska
2010年のデビュー作『Drżące trąby(Shivering Trunks/震える鼻)』は映画祭で11もの賞を獲得。ブロジンスカの作品は参加した全ての映画祭で観客の心をつかんだと言っていい。
カラサンティとパフヌツィ、二人の奇妙な毛むくじゃらの生き物の物語は、寛容と失敗についての笑えて泣ける物語である。特別に作成された人形を使い、ストップモーションの技法で作られた。作家のナンセンスなユーモアがいかんなく発揮されている。語りは監督自身が務めた。
奇妙でシュールなキャラクターたちは『Searching for Devo』に再び登場。アメリカのロックバンドDevo(ディーヴォ)の歌『Blockhead』のために作られた4分間の映像だ。現在はスタニフワフ・レムStanisław Lemの短編小説に基づく『Doradcy króla Hydropsa(ヒドロプス王の助言者)』を制作中である。
パヴェウ・デンプスキPaweł Dębski
ウッチ映画大学撮影学部在学中に制作した二編のエチュードで、その造形の才とユーモアセンスが注目された。『Koszmar włosów(髪の悪夢)』(2007)は先祖に似るため髪の毛を真っ直ぐにしようとする若者の話、『Zupełnie inna historia(別の話)』(2008)は不幸な出来事が重なって台所から放り出された包丁の話である。
卒業制作作品である『Drwal(木こり)』(2011)はトリノ(イタリア)、クラクフ、ウッチの映画祭で受賞。森の家で幼い息子と暮らす男の話だ。この木こりの男がある日豹変して帰宅した時から、男の子の幸せな暮らしは変わっていく。
デンプスキは普段ワルシャワのFumi Studioで働いており、ピョトル・ドゥマワPiotr Dumała監督『Hipopotamy(カバ)』のアニメーター、編集技師を務めた。ボグダン・ジヴォルスキBogdan Dziworski監督ドキュメンタリー映画『Plus minus, czyli podróże muchy na Wschód(プラスマイナス、あるいは蝿の東への旅)』のためのアニメも作成した。
バルビナ・ブルシェフスカBalbina Bruszewska
歯科医か補綴歯科医になるはずだったが、幸い医科大学から映画大学に進路を変更、アニメ作家となった。2003年ウッチ映画大学在学中に人形アニメ『Wiara, nadzieja i miłość(希望、愛、信仰)』を制作。身近な人々に忘れられた老人の世界がモチーフで、テレビを見たり、思い出を反芻したり、宗教的儀式に没頭することで、孤独に慣れようとする姿を描いた。
2006年にSe-Ma-Forスタジオで仕事を始め、3年後にデビュー作『Miasto płynie(The City Sails on/町は漕ぐ)』を完成させた。この作品は都市ウッチ(*ポーランド語で「舟」の意味もある)についてのアニメーション・ドキュメンタリーであり、都市の特徴を描く音楽映画の中に陰鬱、退屈、貧困、暴力、醜聞が織り込まれている。
次の作品『Dobro, piękno i prawda(善、美、真)』(2010)は野蛮な現実とそれに対峙する気高い個人の物語で、Robert Alvaradoのポスターをアニメ化するなどした。現在作家は映画『Czarnoksiężnik z krainy U.S.(USの魔法使い)』を制作中である。L.F.ボームBaumの『オズの魔法使い』をモチーフにした中編アニメで、製作はWJTeamスタジオ。
Marcin Podolecマルチン・ポドレツ
デビュー作の『Dokument(ドキュメント)』はここ数ヶ月の作品の中でも際立って美しいアニメ映画である。作家の父親が主人公で、成長した子ども達が実家のヤロスワフを離れた後、一人で空虚と孤独、満たされなさと戦いながら暮らしている。ポドレツの美しいシンプルな物語はリシャルト・チェカワRyszard Czekałaの古典的作品『Syn(息子)』を彷彿とさせ、控え目さと真実が感動を呼ぶ。
Jakub Sochaヤクプ・ソハは『Dwutygodnik(ドゥヴティゴドニク)』誌のコラムで、ここ数ヶ月で最も注目に値するポーランドのデビュー作品を取り上げ、『Dokument(ドキュメント)』についてこう書いた:
「大半の短編アニメと違って、形式[映画の視覚面]が主人公を邪魔していない。監督の年老いた父親は、至る所に空虚が潜む家の電気を点けて、孤独を追い払おうとする。[映画祭の]授賞式でポドレツは、映画を喜んだ父からチョコレートをもらったと誇らしげに明かした。もちろんチョコをもらってしかるべきである。この7分の肖像は、大半のポーランド映画よりよくできている。」
ポドレツは漫画家としても評価が高い。『Czasem(時々)』(シナリオはグジェゴシュ・ヤヌシュGrzegorz Janusz)はウッチ国際マンガ・ゲーム・フェスティバルMiędzynarodowy Festiwal Komiksu i Gier w Łodziで「2011年の漫画」に選ばれた。『Wszystko zajęte(Everything Taken/空きがない)』『Fugazi Music Club(フガジ・ミュージック・クラブ)』も大好評を博した。
Ewa Borysewiczエヴァ・ボリセヴィチ
在学中の作品『Kto by pomyślał?(Who Would Have Thought?/そんなこと誰が思っただろう?)』(2009)が国内外の栄えある映画祭で受賞。『Do serca Twego(To Thy Heart/あなたの心に)』は2014年ベルリン国際映画祭で金熊賞にノミネートされるなどした。
ボリセヴィチの映画は、作家の詩的でシニカルな感性のフィルターを通った、現実の絵葉書である。『No dobra(Alright/まあいいよ)』では日常の意味のない行為をする市井の人々を描いた。『Kto by pomyślał?』ではルポルタージュとドキュメンタリーを模した表現手法を用いた。ジャーナリストがある失踪人について団地の住人に尋ねる。住人は誰も失踪人を知らないのだが、皆彼についての見解を述べることを義務のように感じるのだ。
Do serca Twego / To Thy Heart (trailer) from ewa borysewicz on Vimeo.
最新作の『Do serca Twego』ではある団地で起こった不幸な愛の物語を皮肉を込めたユーモアで描いた。主人公の若い女性はこれまでの恋愛に失望し、男性の愚痴をこぼしながら、同時に誠実な愛を夢見ている。
アグニェシュカ・スラルAgnieszka SuralはCulture.plのコラムでボリセヴィチの作品についてこう書いた:
「ボリセヴィチは最新のコンピュータ・アニメを使わず、伝統的に紙に描く方法を取っている。このことが作品の真実味を強めている。特別に作られた音声のレイヤーがさらに効果を高めている。作家は現実自体を欠陥だらけのものと見せ、手描きのドローイングはその不完全さをよく表している。」
ダミアン・ネノフDamian Nenow
ポーランドアニメ界のスターの一人。ウッチ映画大学アニメ・特殊効果学部を卒業。2006年からPlatige Imageで仕事をする。2010年この会社で制作したのが『Paths of Hate』である。このアニメはオスカー候補となるとともに(他9本のアニメと賞を争った)、アヌシーの映画祭とコミコン・インターナショナル(アメリカ)で受賞した。もっともこれが最初の成功ではなく、それ以前にも二本の短編アニメ映画を制作し、複数の映画祭で受賞している。『The Aim』と『Wielka ucieczka(大脱走)』である。