諸聖人の日のスープ?日曜日のスープ?どの日にもスープ!
スープを誇る国、ポーランドにやって来た人がまず勧められるのが、ビーツで作る澄んだ真紅色のバルシュチュと、豊かな味わいでソーセージとゆで卵を添えた発酵ライ麦のスープ、ジュレク。この2種のスープはそれぞれクリスマスとイースターという、ポーランドの重要な行事と密接に結びついているが、スープを作って祝う日は、これら二つのカトリック祝祭日だけではない。ポーランド人はスープが本当に好きで、特別な日にはたいていスープを作るため、特別なスープがたくさんある。もっとも典型的な「特別な日のスープ」のいくつかを選んでみた。
日曜日のスープ(「結婚式のスープ」)
チキンスープはポーランドでは「ロスウ(rosół)」と呼ばれる。日曜日の早朝からとろ火にかけ、昼下がり、家族全員がゆったり座って食事を楽しむ頃まで、じっくり時間をかけて作るのが伝統だ。放し飼いで育った雌鶏の肉のほか、にんじん、ポロネギ、セロリ根、パセリ根、そして黒焼き玉ねぎを鍋に入れ、オールスパイス数粒、ベイリーフ数枚、適量の黒胡椒、塩とラベージを加えて一緒に煮る。ロスウを美味しく作るにはゆっくり煮る必要があり、ポーランド人はこれを「mrugać(まばたきする)」ように、と表現する。目と関わりのある言葉はこのほかにもあり、スープの表面に浮かんでくる油脂は「オカ(oka)」〔目を意味する「オコ(oko)」の複数形〕と呼ばれている。ロスウは澄んだ黄金色をしているのが理想で、できあがったら手製の卵の麺を加え、刻んだパセリの葉を散らす。「ハレの日」の特別感を醸し出す料理で、結婚式の祝宴で最初に供されたり、特別な家族の集まりで振る舞われることも。
火曜日のスープ(トマトスープ)
トマトスープ。写真:Diana Domin / Forum
日曜日のお昼のためだけにロスウを作る人はいない。ポーランドではチキンスープを一度作るとなったら、たいてい巨大な鍋いっぱいに作る。大がかりな日曜のお昼が済んだら、残ったスープは月曜日の食卓に再び登場する。そのまた残りは豊かな風味の鶏肉の出汁として、絶品トマトスープを作るために使われる。自家製のトマトピュレ(夏の新鮮なトマトで作られ、冬用に冷凍または瓶詰めにされる)、また風味づけにクリームを加えて作り、米か麺を添えて供する。マグカップで飲まれることも。最近は必ずしも火曜日に作られているわけではないが、手早くでき、人々に広く愛されるポーランドの定番料理だ。トマトスープはたくさんの人が作り方を知っているが、同じ味になることはなく、どの家にもそれぞれのこだわりがある。
諸聖人の日のスープ
ハロウィーンはポーランドでは比較的新しい伝統で、主に大都市や若い人たちの間で人気だが、同じ頃に祝われる諸聖人の日(11月1日)は昔から続く、そして今でも非常に重要な行事である。ポーランド人が墓地を訪れて代々の墓の上にキャンドルをともし、ポーランド各地からやってくる家族や親戚に会う日だ。このように家族が集まれば、ほぼ自動的に、皆で食事をする流れとなる。諸聖人の日の会食を始めるにあたって欠かせない料理と言えば……牛の第二胃(ハチノス)のスープ、「フラキ(flaki)」。この伝統はまだ冷蔵庫がなかった時代にさかのぼり、11月1日はクリスマス前に家族が集まる一大イベントだった。この晩秋の祭日は、かつては冬を前に動物を屠殺する時期に重なっていた。「フラキ」はポーランド語で「臓物」を意味する言葉で、鮮度の点から言って最初に食べる必要があり、この親族の集まりの際に振る舞われるのがしきたりだった。牛の胃を食べることについては、賛否両論があるかもしれない。ヨーロッパには多くの類似した料理があり、まったくもって安全で衛生的な食材だが、現在はベジタリアン向けに、キノコで代用した料理も定着している。どのような形にせよ、フラキはポーランドのスープのうち、もっともスパイスが効いており、大量のマージョラムのほか、生姜やパプリカのパウダー等を加えて作る。重厚でスパイスをふんだんに用いる、伝統的な田舎の家庭料理が復活した例と言える。フラキは小型パンと一緒に食べることになっている。今では1年を通して見かけるスープだが、主に観光客ではなく、ポーランド人向けのレストランで供されている。
軍隊スープ
エンドウ豆のスープ。写真:Beata Zawrzel / East News
軍隊は厳密に言えば特別な機会ではないが、「グロフフカ(grochówka)」と呼ばれるエンドウ豆(groch)のスープは軍隊を連想させ、擬似軍隊キャンプ、また夏の間ポーランド各地で開催される軍隊テーマのピクニックでは、民間に払い下げられた炊事車がこのスープを振る舞っている。たいてい、野外の会場で迷彩柄の軍隊イメージが演出される中、ボウルのように大きなお椀で出され、これを食べる。このスープ自体、ボウルに入った食事のようなものだ。黄色い干しエンドウ豆を水につけて戻し、下準備が整ったら、じゃがいも、マージョラム、オールスパイス、それにたくさんの「キェウバサ(kiełbasa)」つまりソーセージと一緒に煮込む。さらに元気が出るように、ラードを加えて作る人も。野外での味は格別だが、ポーランド人はグロフフカを家でも作り、厚切りの黒パンを添えて出せば、これ一つで1日のメインの食事に。
夏のスープ
「フウォドニク(chłodnik)」。写真: Grażyna Makara
ポーランド人にとって夕食をスープで始めるのはあまりにも当たり前のことで、あたたかい季節になっても(夏で完全に暑くなっても)、第一の皿にスープを持ってくることをやめられない。そこで登場するのが夏のスープだ。ヨーグルトとケフィア(健康に非常に良い発酵ミルクで、東欧とアジア・中東の一部で好まれる)がベースで、ハツカダイコン、きゅうりと若いビーツを用いて作る、ショッキングピンク色の「フウォドニク(chłodnik)」、トマトか若ビーツ、またはスイバやアスパラガス等、季節の野菜を煮て作るスープ、そしてチェリーやイチゴなど新鮮な夏の果物を水と砂糖で煮て、パスタと甘いクリームを添えて供されるフルーツ・スープがある。
やりくり上手スープ(ミックス・ベジタブル・スープ)
「クルプニク(krupnik)」(大麦を用いた田舎風スープ)。写真:Bartosz Krupa / East News
冷蔵庫スッキリスープとしても知られるこのスープは、冷蔵庫の引き出しの奥底に野菜が何か見つかった時なら、いつでも作ることができる。しわしわになってしまったもののまだ使える状態なら、野菜は鍋に直行。家計上の節約にもなり、二度と再現されない食事へと変身する。食材を無駄にしないよう、買いすぎには注意!
「求婚者を断る」スープ
そう、ポーランドには、娘の彼氏に、家族としては不満だという意向を伝えることができる、特別なスープがある。このほぼ黒い、ほんのり甘い鴨の血をベースにしたスープは、今日では稀だが、一部の家庭やレストランでまだお目にかかることができる。さすがに現在、若い人が将来の義理の親から、このご縁には乗り気でない、とディナーの食卓で知らされる恐れはもうほとんどないが、「黒いスープを出す」ということわざは、両親からの拒否を表す表現として、今も広く知られている。
執筆:アンナ・メイェル(Anna Mejer)、2023 年4月19日、改訂:2023年10月19日
日本語訳:柴田恭子(Yasuko Shibata)、2025年11月