最も魅力的なポーランドの山脈9選
ポーランド南部には多くの山脈がある。その中には、絵画のような美しい風景を誇る人気の観光地や、貴重な文化遺産を有するところもある。Culture.plでは、タトラ山脈の高山風景から、ストウォヴェ山脈のテーブルのような奇妙な地形、そして森林に覆われたビェシュチャディ山脈に至るまで、さまざまな景色をご紹介します。
1. シフィエントクシスキェ山脈(Góry Świętokrzyskie)
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シフィエントクシスキェ山脈にある岩塊流、写真:Jarosław Kubalski / AG
シフィエントクシスキェ山脈は、ポーランド中南部に位置する低山脈である。最高峰は標高614mのウィシツァ(Łysica)。標高は低いものの、この山脈の観光価値は高い。理由は主に二つある。
まず、シフィエントクシスキェ山脈がポーランド最古の山地であること。その一部は5億年前にまで遡る。このような古い岩石を見ていると、物事の捉え方のスケールが変わってくる。次に、この山並みには素晴らしい見どころがあり、その多くがシフィエントクシスキェ国立公園に含まれている。例えば、森の間にひっそりと存在する「ゴウォボジェ(gołoborze)」と呼ばれる岩塊流や、幅4kmにも及ぶ広大なヴィルコフスカ渓谷(Dolina Wilkowska)のような美しい谷がある。
シフィエントクシスキェ山脈には文化遺産も見られ、例えば、ボゼンティン(Bodzentyn)という古風な町には、14世紀に遡る趣ある城跡が残っている。また、ウィサ・グラ(Łysa Góra)山頂には、12世紀に建てられた歴史的な聖十字架(Święty Krzyż)修道院があり、ゴシックとバロックの建築様式が見られる。修道院には聖十字架の遺物が保管されており、これが山脈全体の名前の由来になった(シフィエントクシスキェは、「聖十字架」という意味)。
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タトラ山脈にあるモルスキェ・オコ湖、写真:Jan Graczyński / East News
タトラ山脈はポーランドで最も高い山脈で、ポーランド南部からスロヴァキア北部にかけて広がっている。ポーランド側にある最高峰はリスィ(Rysy)山であり、標高2499mに達する(スロヴァキア側の山脈の一部はさらに高い)。ポーランドで唯一の高山として、観光客に非常に人気がある。
タトラ山脈では畏敬の念を起こさせるような風景が見られるが、中でもモルスキェ・オコ(Morskie Oko)湖の眺めは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙による「世界で最も美しい湖5選」にも名を連ねている。その緑色の水と、リスィ山の風景を含めた周囲の素晴らしい自然が特に評価されている。ザヴラト(Zawrat)峠からクシシュネ(Krzyżne)峠へ抜けるオルラ・ペルチ(Orla Perć「鷹の道」の意味)という険しいコースからは、見事な高地の景観を楽しむことができる。
国立公園によって保護されているタトラ山脈のふもとには、美しい町ザコパネ(Zakopane)がある。観光地として人気が高く、ポーランド文化に触れる機会が数多く提供されている。例えば、著名な彫刻家ヴワディスワフ・ハショル(Władysław Hasior)の作品を展示するギャラリーや、スタニスワフ・イグナツィ・ヴィトキェヴィチ(Stanisław Ignacy Witkiewicz)の名前を冠した有名なヴィトカツィ劇場などがある。
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ピェニヌィ山脈にあるソコリツァ山の一本松、写真:Michał Ostaszewski / Reporter / East News
ピェニヌィ山脈は、タトラ山脈から車で北東に1時間ほどの場所にある。最高峰は標高982mのチシ・コロヌィ(Trzy Korony「三つの冠」の意味)。
ピェニヌィといえば、そこを流れるドゥナイェツ(Dunajec)川の渓谷で楽しむ壮大なラフティングが人気である。ラフティングが行われる峡谷は、断崖絶壁の間を約8キロメートルにわたって曲がりくねっており、観光名所として親しまれている。人里離れた急斜面に生える美しい松の木もよく知られ、特に、ソコリツァ(Sokolica)山の一本松が有名だ。
ピェニヌィの文化遺産には、14世紀に建てられた要塞のニェジツァ(Niedzica)城(別名ドゥナイェツ城)がある。チョルシュティン(Czorsztyn)湖畔に美しく佇むこの城は保存状態がよく、ルネサンス様式の建築を見事に残している。湖の畔には中世のチョルシュティン城の遺構もある。高い岩の上に位置し、かつて極めて戦略的な要塞であったゴシック様式の城跡からは、周囲の壮大な風景を見渡せる。
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ゴルツェ山脈にあるクドゥウォンスキ・バツァ岩、写真:Jerzy Opioła / commons.wikimedia.org
ピェニヌィ山脈のすぐ北部にはゴルツェ山脈がある。この山脈の最高峰は標高1314mのトゥルバチ(Turbacz)山である。ゴルツェ山脈には、静かな谷で分けられた曲がりくねった長い尾根や、ブナやトウヒの美しい森が見られる。のどかな草原も多く存在する。
この地域最大の見どころはマグルキ(Magurki)山で、標高1108mの山頂には、この地域だけでなく、ピェニヌィやタトラ山脈も含めた絶景を一望できる展望台がある。クドゥウォン(Kudłoń)山の斜面にある高さ10数メートルの印象的なクドゥウォンスキ・バツァ(Kudłoński Baca)岩も、景観の特徴的な要素になっている。
ラブカ=ズドルイ(Rabka-Zdrój)町には、1606年に建てられた木造の見事な聖マリア・マグダレナ教会(Kościół św. Marii Magdaleny)がある。この文化財は、高くそびえる塔と、19世紀初頭に作られた内部の多色装飾を最大の特徴とする。また、ヤヴォジナ・カミェニツカ(Jaworzyna Kamienicka)山頂の草原には、1904年に建てられた小さく魅力的なブランダ礼拝堂(Bulandowa Kapliczka)があり、興味深い光景を作っている。
5. ベスキト・ジヴィエツキ(Beskid Żywiecki)
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ベスキト・ジヴィエツキにあるソポトナ・ヴィエルカの滝、写真:Paweł Sowa / AG
ベスキト・ジヴィエツキはポーランドで二番目に高い山脈である。ゴルツェ山脈の東側に位置し、最高峰である標高1725mのバビャ・グラ(Babia Góra)山からは、息を呑むような眺望が開ける。
ベスキト・ジヴィエツキは、美しい風景と高地の雰囲気でよく知られている。ここでは木々の生い茂る谷や、岩で覆われたアーチ型の山頂に点在する魅力的な村々を見ることができる。この地域最大の見どころには、ソポトニャ・ヴィエルカ(Sopotnia Wielka)村にある高さ10mの壮大な滝がある。
ベスキト・ジヴィエツキのふもとにはジヴィエツ(Żywiec)町があり、ハプスブルク宮殿などの名所が存在する。この優雅で、さりげない古典様式が見られる建物は、19世紀から20世紀の変わり目に建設された。この地域のもうひとつの文化遺産は、スハ・ベスキツカ(Sucha Beskidzka)村にある。クラクフのヴァヴェル城に似ているため「リトル・ヴァヴェル」と呼ばれることもあるルネサンス様式の印象的な城である。
6. ベスキト・シロンスキ(Beskid Śląski)
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ベスキト・シロンスキのバラニャ・グラにあるヴィスワ川の源流、写真:Adam Ławnik / East News
ベスキト・シロンスキは、ベスキト・ジヴィエツキ山脈の西側にある。この二つの山脈は、他の丘陵と合わせて、一般的にベスキディ(Beskidy)と呼ばれる山脈群を構成している。ベスキト・シロンスキの最高峰はスクシチネ(Skrzyczne)山で、標高は1257mに達する。
ベスキト・シロンスキといえば、ポーランド最大の川であるヴィスワ川の源流が、ここバラニア・グラ(Barania Góra)山にあることが知られている。美しいハイキングコースを小川沿いに登っていくと、ヴィスワ川の水源である池にたどり着く。
ヤヴォジンカ(Jaworzynka)村もこの山地の大きな魅力で、ここではポーランド、スロヴァキア、チェコ三カ国の国境が交わる。ベスキト・シロンスキのふもとにあるビェルスコ・ビャワ(Bielsko-Biała)町には、著名な風景画家ユリアン・ファワト(Julian Fałat)の旧別荘があり、現在は作家の作品を展示した美術館となっている。
他にも、この地域の興味深い文化的景観には、ウストロン(Ustroń)町にある聖アンナ教会(Kościół św. Anny)がある。18世紀に建てられたこの教会は、バロック期の木造聖堂建築の驚くべき例である。
7. ビェシュチャディ山脈(Bieszczady)
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ビェシュチャディ山脈のポウォニナ・ブコフスカ(Połonina Bukowska)(高山草原)、写真:Waldemar Sosnowski / AG
ビェシュチャディ山脈は国の南東角に位置している。ここでもまた、ポーランド・スロヴァキア・ウクライナ三カ国の国境が、クシェミェニェツ(Krzemieniec)山頂で交差している。ビェシュチャディ山脈のポーランド側の最高峰は、標高1346mのタルニツァ(Tarnica)山である(山脈のウクライナ側の部分はもっと高い)。
ビェシュチャディ山脈には、人里離れた静かな森による独特の風景が多く見られることから、ポーランドで最も野生の残る地域と呼ばれることがある。この地域最大の魅力には、多くの歩道を備えた美しいブナの森や、印象的なダム(長さ664メートル、高さ82メートル)のある大きな人工湖のソリナ湖(Jezioro Solińskie)などが挙げられる。
サノク(Sanok)町の歴史博物館には、有名な画家ズジスワフ・ベクシンスキ(Zdzisław Beksiński)の作品を展示するギャラリーがあり、文化的にも興味深い。また、クロシチェンコ(Krościenko)にある1799年建立の教会をはじめ、この地域一帯に魅力的な木造の正教会を見ることができる。
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カルコノシェ山脈にあるシュクラルキ滝、写真:East News
ポーランドの南側国境の西端には、カルコノシェ山脈がある。山脈の最高峰は標高1603mのシニェシュカ(Śnieżka)山で、ポーランドとチェコの国境に位置し、その山頂には1974年に建てられた美しい気象観測所がある。
カルコノシェ山脈の魅力はなんといっても1000mを超える相対的な高さであり、その眺望は圧巻である。この山脈の自然景観の中で、特に訪れる価値のあるのは、シュクラルカ(Szklarka)川にある美しいシュクラルキ滝(Wodospad Szklarki)だ。標高520mに位置する高さ13mの滝は、静かな森に囲まれている。
近隣には、趣のある町シュクラルスカ・ポレンバ(Szklarska Poręba)があり、ここの鉱物学博物館(Muzeum Mineralogiczne)には、ポーランドで最もユニークな鉱物や化石の地質学的コレクションが展示されている。また、この地域の文化的な名所には、ホイニク(Chojnik)城跡がある。イェレニャ・グラ(Jelenia Góra)町近くの高い岩の上に位置するこの城跡は14世紀に遡る。
9. ストウォヴェ山脈(Góry Stołowe)
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ストウォヴェ山脈にあるブウェンドネ・スカウィ岩、写真:Gerard / Reporter / East News
ストウォヴェ山脈は、カルコノシェ山脈の南西からほど近いところにある。水平に重なる岩層でできた独特の地形は、人工物を思わせる(このため「ストウォヴェ(=机)山脈」という名前がついた)。
最高峰である標高919mのシュチェリニェツ・ヴィエルキ(Szczeliniec Wielki)は巨大な台地状をしている。この場所の様々な奇岩が、周辺の絶景ポイントを形作っている。ブウェンドネ・スカウィ(Błędne Skały「迷った/道から外れた岩」の意味)という風変わりな名前の岩塊群は、その中を人が移動できる夢のような岩の迷宮を作り上げており、この地域で最も貴重な自然景観のひとつに数えられている。
この地域のクドヴァ=ズドルイ(Kudowa-Zdrój)町には、頭蓋骨礼拝堂(Kaplica Czaszek)という不思議な文化遺産がある。1776年から1805年にかけて建設されたこの独特の場所には、3000個以上の頭蓋骨や骨の破片が取り付けられており、怖いけれども興味深い光景である。また、ヴァムビェジツェ(Wambierzyce)町にある18世紀バロック様式の聖母マリア訪問教会(Bazylika Nawiedzenia Najświętszej Marii Panny)も印象的だ。重要な巡礼地であることから、「シロンスクのイェルサレム」とも呼ばれている。
執筆:マレク・ケンパ(Marek Kępa)2019年6月
日本語訳:パヴェウ・パフチャレク(Paweł Pachciarek)、YA、2022年7月
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