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Podsumowanie
第二次世界大戦の終結以来、コミュニズムの道を歩むこととなったポーランド。しかし、他の東欧諸国とは違い比較的締め付けが緩かったポーランドは、1950年代中期には社会主義リアリズムから脱却していく。そのような「雪解け」の時代、新世代のアーティストによる自由な表現がもっとも推し進められたのが、映画とグラフィック・デザインという二つの分野だった。
Content
アンジェイ・ワイダやイェジ・カヴァレロヴィチなどの監督を世界に知らしめた数々の映画が「ポーランド派」と称誉されたことは、このサイトの読者の多くがご存知だろう。実は、映画ポスターのグラフィック・デザインにおいても「ポーランド派」と称され、国際的に認められていたのだが、それはどうだろうか。日本とポーランドの国交樹立100周年である2019年の最後を飾るにふさわしい展覧会が東京・京橋にある国立映画アーカイブで開催中だ。
東欧の大国にもかかわらず、歴史に翻弄されてきたポーランドは、生き延びるためのしなやかな力に満ちていた。政治的抑圧、そして物質的制約(画材の不足など)というネガティブな環境を逆手にとった、したたかで、しなやかな力で“新しい美”を作り出していく。そんな広がりのある豊かな感性が根付いていたことは、数々のポスターのグラフィックが物語っている。ことにポーランドにおいて幸運だったのは、映画ポスターが、完全に構築された商業的な映画業界の匿名的な仕事ではなく、第一線で活躍するグラフィック・デザイナーたちによる非商業的創造活動の場であったことだ。ロマン・チェシレヴィチ、ヤン・ムウォドジェニェツなど、当時の抜きん出たデザイナーたちは、そのグラフィック・デザインに、映画から受けたインスピレーションを隠喩に満ちた自在な表現へと実らせた。
特徴的なのは文字情報の少なさだ。これは必ずしも商業的な役割としてのポスターでなければならなかったわけではなく、アート作品としての立ち位置が尊重されたということだ。街角に貼られるアート——とは、大変ぜいたくな環境ではないだろうか。もうひとつの特徴はさまざまな表現による「顔の描写」だ。映画は人間を映すものだから当然人の顔は、ポスターのグラフィック・デザインを考えるうえの、ひとつの大きな主題となったのだろう。ただ、その表現の斬新な解釈と独創的な表現は、映画全体の解釈と相まって、時にゆかいであり、ときに含蓄豊かであり、示唆深く、そして何よりも新しい美しさを発見させてくれる。
本展ではポーランド映画を描写した34点の他に、日本映画を描写した21点、そして欧米の誰もが知る映画を描写した41点のポスターが鑑賞できる(展示替のため、うち10点は1月28日から入れ替わる)。映画ファンはもちろん、グラフィック・デザインやアート好きな人にもぜひ見て欲しい。
展覧会
日本・ポーランド国交樹立100周年記念 100th Anniversary of Poland-Japan Diplomatic Relations
ポーランドの映画ポスター Polish Posters for Films
2019年12月13日(金)〜2020年3月8日(日)
※月曜日、12月28日(土)~1月3日(金)は休室
国立映画アーカイブ 展示室7F
開室時間 11:00am-6:30pm(入室は6:00pmまで)
執筆:YNA 2019年12月