カタジナ·クラコヴィアク=バウカ(Katarzyna Krakowiak-Bałka)は、ポーランドを代表する現代芸術家の一人であり、特にサウンドインスタレーションの分野で国際的に高く評価されています。彼女の作品は独創的で革新的であり、音響芸術と建築の境界を探求し、観客に魅惑的な感覚体験を提供します。また、彼女はヴェネツィア・ビエンナーレの建築部門においてポーランド館を代表し、その他多くの国際的なプロジェクトを実施してきました。
クラコヴィアク=バウカは、ポーランドのワルシャワで生まれ、ワルシャワ美術アカデミーとグダンスク美術アカデミーで美術教育を受け、芸術のキャリアをスタートさせました。彼女はサウンドアート、建築、彫刻、インスタレーションといったさまざまなメディアを組み合わせ、芸術の新たな次元を探求しています。その作品は、芸術と科学、音響と視覚、建築とパフォーマンスの領域を結びつけ、その境界を模索するための実験の場でもあります。
ヴェネツィア・ビエンナーレのポーランド館
クラコヴィアク=バウカは、2018年にヴェネツィア・ビエンナーレの建築部門でポーランド館の代表として招かれ、《Making the walls quake as if they were dilating with the secret knowledge of great powers(大国の秘密知識で壁が膨張するかのように震わせる)》を発表しました。彼女はポーランド館を音響システムに変え、建築自体を音響の一部として活用しました。訪れた人々は、建物内部で奇妙な音響体験をすることができ、建築の構造と音響が絶妙に統合されました。建築の壁自体を振動板として活用して音楽的な体験を提供し、建築が静的なものではなく、響きや振動を通じて生き生きとした存在であることが示されました。クラコヴィアク=バウカのアプローチは、建築と音響芸術の新たな対話を提供し、観客に空間と音の相互作用を体感させるものでした。この作品は、ヴェネツィア・ビエンナーレの訪問者に強烈な印象を与え、国際的に高く評価されました。
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カタジナ·クラコヴィアク=バウカのインスタレーション、《Making the walls quake as if they were dilating with the secret knowledge of great powers(大国の秘密知識で壁が膨張するかのように震わせる)》 、第13回ヴェネチア·ビエンナーレ国際建築展ポーランド館、2012年。写真:ポーランド国立ザヘンタ美術館
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Instalacja Katarzyny Krakowiak "Making the walls quake as if they were dilating with the secret knowledge of great powers" w Pawilonie Polskim na 13. Międzynarodowym Biennale Architektury w Wenecji, 2012, fot. Zachęta Narodowa Galeria Sztu…
ニューヨーク近代美術館Postでのプロジェクト
クラコヴィアク=バウカは、2013年にニューヨーク近代美術館が運営する Post (世界的な文脈における芸術とモダニズムの歴史に特化したオンラインリソース)に招かれ、独自の視点とサウンドアートの専門知識を融合したユニークなプロジェクトを発表しました。《When a stem breaks the water perpendicularly, its angle is measured to be 0 degree, and the degree gets closer to 90 as it is slanted more, and the level surface is 90 degrees [from the Sogetsu Ikebana Handbook](茎が水を垂直に割ったときの角度を0度とし、傾けるほど角度が90度に近づき、水平面が90度になります[草月いけばなハンドブックより])》と題された本プロジェクトは、草月会館をモチーフとしています。1962年にジョン・ケージ(John Cage)が初来日した際に、名高い《4分33秒》(1952年)の続編にあたる《0'00”》が作曲され、草月ホールでケージによって初演されました。
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2012年に第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展のポーランド館に展示されたカタジナ・クラコヴィアック=バウカ(Katarzyna Krakowiak-Bałka)のインスタレーション《Making the walls quake as if they were dilating with the secret knowledge of great powers(大国の秘密知識で壁が膨張するかのように震わせる)》のイメージ・ギャラリーである。
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《空気の浮き沈み》、ポーランド国立ザヘンタ美術館 、2013年。写真:Krzysztof Pijarski
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草月会館旧館は日本の近代建築を牽引した建築家・丹下健三により、1958年に竣工しました(現在の建物は同じく丹下健三により1977年竣工)。同年発足した草月アートセンターは、当時の様々なジャンルにわたる前衛芸術の重要な拠点の一つとして画期的な役割を果たした伝説的な場所です。クラコヴィアク=バウカは、この草月とケージの演奏に思いを馳せ、階上では人々が生け花に没頭している一方で、地下ホールでは実験的な沈黙のコンサートが行われている状況に注目し、音と沈黙という対比を用いました。音楽がステージから拡散してゆく様子を色とりどりの球体によって視覚化し、エコーが建物全体に広がる様子を示すと共に、エコーの経路を無色の輪郭線でたどって、空間を音もなく彷徨う姿を現しました。
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カタジナ·クラコヴィアク=バウカ、《ヒューマン·アンテナ》、国際視覚芸術フェスティバルAlternativaでのパフォーマンス、グダンスク美術協会「Wyspa」、2011年。写真:Elvin Flamingo
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ジュ・ド・ポーム《Where Does Any Miracle Start?(どこから奇跡は始まるの?)》2022年11月7日―2023年4月30日
ジュ・ド・ポーム(Jeu de Paume)のオンラインスペースで発表されたオンライン作品。このプロジェクトは、作家自身によれば「小さな移民、つまり目に見えない形で建築物を占拠する昆虫に捧げられています。彼らは活動家でもあるため、宇宙を交渉し、柔軟で、すぐに生き残って再生する強さを持っており、決して諦めません。私は彼らの存在を可視化して、彼らに声を与えたいと思っています。このようにして、ジュ・ド・ポームは疎外され目に見えない存在の声を伝えます。」クラコヴィアク=バウカは、地震センサーを使用し、科学者と協力して、多くの場合人間には聞こえない周波数を記録することで、動物や昆虫がコミュニケーションする音や振動を知覚できるようにします。そして建物は環境に耳を傾け、内部で音を拡散させることで、それらは建築によって結合され、歪められ、再び音となります。このプロジェクトでは、自然界の音、風、水、生物といった要素が、観客に対して奇跡的な体験を提供しました。クラコヴィアク=バウカは、自然界の美しさと驚異を称賛し、私たちの感覚を通じて奇跡がどこから始まるのかについての疑問を投げかけました。
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カタジナ・クラコヴィアク=バウカの空間音響インスタレーション 《Where does any Miracle Start?(どこから奇跡は始まるの?) 》、ジュ・ド・ポーム国立美術館、パリ、2022年11月8日。写真:Bartek Barczyk/IAM
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クラコヴィアクの芸術のこれから
クラコヴィアク=バウカの作品は、芸術と科学、音響と視覚、建築とパフォーマンスの融合を通じて、新しい芸術的言語を探求し、私たちに深い洞察を提供しています。彼女は常に実験的で、音楽と建築の融合において新たな領域を開拓し、その可能性を探求しています。彼女の作品は、建築が音楽の楽器のように振る舞い、音響が空間を彩る新たな美的体験を提供します。クラコヴィアク=バウカのプロジェクトは、音楽の力が私たちの環境や感覚に与える影響を考え直すきっかけとなります。彼女の作品を通じて、私たちは日常の音に耳を傾け、空間と音楽の融合が生み出す魅力的な世界を探求することができるのです。彼女の作品は、芸術が知識、感覚、感情を探求するための強力なツールであることを示しており、国際的評価もますます高まっています。今後も彼女の制作がさらに深まり、音響空間に不思議な魔法をかけながら、芸術と科学の融合に新たな道を切り開くことができると期待されます。
作家のウェブサイトはこちら:http://katarzyna-krakowiak.com/
執筆:加須屋明子(京都市立芸術大学教授)、2023年11月
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