ウッチ音楽大学でジグムント・クラウゼ(Zygmunt Krauze, 1938年生まれ)のクラスに在籍し、ブリュッセル王立音楽院ではピーター・スウィンネン(Peter Swinnen, 1965年生まれ)に師事。ポーランドと日本の血を引く家系に生まれ、ウッチと大阪に在住。
ウッチではクシシュトフ・クニッテル(Krzysztof Knittel, 1947年生まれ)の下、電子音楽の勉強を始め、ブリュッセルではカタジナ・グウォヴィツカ(Katarzyna Głowicka, 1977年生まれ、“カシャ(Kasia)”として知られる)の下で勉強を続ける。現在は、ニューヨークのコロンビア大学作曲科博士課程に在籍。グラーツ(オーストリア)でのImpuls Academy(2015年)、ラジェヨヴィツェ(Radziejowice)でのSynthetis(2016年)、ダルムシュタット(ドイツ)でのFerienkurse für Neue Musik(2016年・2018年)、アペルドールン(オランダ)でのYoung Composers Meeting(2017年)、アントワープ(ベルギー)でのChampdaction LAbO(2018年)など、数多くの現代音楽講習会に参加。また、ゲント王立音楽院(ベルギー)およびブリュッセルのP.A.R.T.S.コンテンポラリーダンス学校の協力を得て、ベルギーの現代音楽アンサンブルICTUS指導の下でも学んだ。
福岡似奈の作品は、ウッチ・フィルハーモニー管弦楽団(Orkiestra Symfoniczna Filharmonii Łódzkiej)、ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団(Koninklijke Muziekkapel De Gidsen)、オーケスト・デ・エレプレース(orkest de ereprijs)、Hashtag Ensemble、またWrocław Improvising Orchestraや古楽アンサンブル「il fondamento」などによって演奏されてきた。福岡の楽曲が初めて演奏されたのは、ブリュッセルにあるベルギー王立歌劇場(De Munt/La Monnaie)、アムステルダムにあるムジックヘボウ・アン・エト・アイ(Muziekgebouw aan 't IJ)でのことだった。彼女の曲は、ポーランド国内および国際的な多くのフェスティバルで披露されている。例えば、ウッチで開催されたムジカ・モデルナ音楽祭(Musica Moderna)やムジカ・プリヴァタ音楽祭(Musica Privata)、ヴロツワフで行われたムジカ・ポロニカ・ノヴァ現代音楽祭(Musica Polonica Nova)、ルブリンのコディ伝統・アヴァンギャルド音楽フェスティバル(Kody)、キューバのハバナで催されたノルウェー・キューバ劇場祭、またドイツのダルムシュタット国際現代音楽祭やベルギーのヘントにある音楽センターDe Bijloke Muziekcentrumのレジデンス・ワークショッププログラム「Manufactuur」などだ。
また、数多くの新進現代音楽グループと共演している。ポーランドの音楽トリオEnsemble Kompopolex、大阪のバンドDown the Rabbit Hole、ベルギーのクリエイティブ集団Nemø ensemble、同じくベルギーのデュオThe Third Guy、ベルギーのアンサンブルErämaa Trioなどだ。福岡は、大衆文化やインディーズ文化、インターネット上の現実、多言語主義(マルチリンガルリズム)、ホラー文学、SFなどから多方面にわたってインスピレーションを得ている。そのため彼女の作品には、インターネット上のオブジェ・トゥルヴェ(objets trouvés、拾得物)や、大衆文化への言及といったことが頻繁に現れる。作品の中では、音楽だけでなく、映像やパフォーマンス活動を通じて聴衆と対話している。彼女の創作における重要なテーマの一つに、ビジュアルアーティストや振付師とのコラボレーションを通じて展開される学際的な活動がある。
2018年には、ポーランドの音楽祭で2曲の新作を聴くことができた。『不気味の谷(uncanny valley)』(ヴロツワフで行われたムジカ・ポロニカ・ノヴァ現代音楽祭にて)とアニメーションアーティストの吉田和泉による映像で彩られた『ホラープロジェクト・ユゴス(Yuggoth)』(ウッチで開催されたムジカ・プリヴァタ音楽祭にて)だ。前者は、「メッセンジャー」とディストピアの境界線を舞台とした作品で、アンドロイドがあまりにも人間に似すぎていることから不快感を呼び起こし、人間同士が意思疎通を図ることができないという世界が描かれていた。後者の曲は、ホラー映画を音楽の言語へと変換しようとする試みであった。
曲目一覧:
- 四句(Cztery Haiku)(2009)
メゾソプラノ、フラウト・トラヴェルソ、マリンバのための曲
句:松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶
- 三連祭壇画「最後の審判」(Tryptyk ‘Sąd Ostateczny’)(2010)
ソプラノ・アルト・テナー・サクソフォーン、チェンバロのための曲
ヒエロニムス・ボスの作品をイメージして
- ノーネーム(No name)(2010)
バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスのための曲
- 呪い(Czary)(2011)
メゾソプラノ、ハープ、ファゴットのための曲
詩:シモン・シモニデス
- マリンバ協奏曲(Koncert na marimbę i orkiestrę)(2011)
マリンバ・ソロ、オーケストラのための曲
- エントロピー(Entropia)(2011)
4人の打楽器奏者のための曲
- Quatuor(2012)
クラリネット、バイオリン、チェロ、ピアノのための曲
- 弦のためのカルテット(Quartet for Strings)(2012)
琴、古筝(グーチェン)、ギター、ピアノのための曲
- Musique n’est que des nuages(2013)
14人の管楽器奏者のための曲
- Efflux(2013)
オーケストラのための曲
- Mållös Mångata(2014)
バイオリン、チェロ、ピアノのための曲
- Mångata(2014)
メゾソプラノ、チェロ、ピアノのための曲
- マリンバ協奏曲(Koncert na marimbę i orkiestrę)(2014)
マリンバ・ソロとエレクトロニクスのための曲
- 13<x&x<11(2014)
バスクラリネット独奏のための曲
- Belgian rare groove & breakbeat(2015)
マリンバ、ライヴ・エレクトロニクスのための曲
- BCHPbVNF(2015)
ピアノ独奏のための曲
- 神殿の丘(De Tempelberg)(2016)
古楽オーケストラのための曲
- シングルプレイヤー(SINGLE PLAYER)(2016)
6人のインプロバイザーのためのビデオ楽譜
- Almost.EVERYTHINGHAPPENS(2016)
振付師クラース・フレーク・デヴォス(Klaas Freek Devos)とのコラボレーションによるプロジェクトで、5人の奏者(フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)と5人のダンサーのための曲
- And Elsewhere.(2017)
15人の奏者のための曲
- シングルプレイヤーV2 co-op(SINGLE PLAYER v.2 co-op)(2017)
奏者(打楽器、シンセサイザー)、ビデオのための曲
- Almost.EVERYTHINGHAPPENStwice(2017)
振付師クラース・フレーク・デヴォスとのコラボレーションによるプロジェクトで、2人の奏者(クラリネット、ピアノ・シンセサイザー)と2人のダンサー、ライヴ・エレクトロニクスのための曲
- ザ・ファイナル・ガール(The Final Girl)(2018)
女性ハープ奏者、ビデオ、ライヴ・エレクトロニクスのための曲
- 不気味の谷(uncanny valley)(2018)
ビデオ、四重奏(フルート、アコーディオン、打楽器、ライヴ・エレクトロニクス)のための曲
- ホラープロジェクト・ユゴス(Horror Project: Yuggoth)(2018)
ライヴ・エレクトロニクス、リアルタイムビデオ、三重奏(クラリネット、チェロ、打楽器)のための曲。ビデオはアニメーションアーティスト、吉田和泉とのコラボレーションにより制作された。
- 現代音楽を作るために知っておきたい5つの秘密(5 Secrets to Making New Music)(2019)
ビデオ、エレクトロニクス、四重奏(ヴァイオリン、フルート、サックス、ハモンドオルガン)のための曲
- シングルプレイヤーV3スリーフォーオール(SINGLE PLAYER v.3 Three for All)(2019)
ビデオ、2人の奏者(エレキギター、スネアドラム)のための曲
- 静物画 #31(Still Life #31)(2019)
ライヴ・エレクトロニクス、四重奏 (フルート、クラリネット、ハープ、打楽器・エレクトロニクス)とオブジェのための曲
- howto jouïssance(2019)
ビデオ、エレクトロニクス、チェンバロのための曲
執筆:フィリプ・レフ(Filip Lech)、最終更新:2023年10月20日
日本語訳:スプリスガルト友美(Tomomi Splisgart)