ビリヤードから重要な問題へ
「移動大学」卒業生の一人、ヤドヴィガ・シコルスカ(Jadwiga Sikorska, 1871-1963)。写真:J. Golcz / Wikipedia
シュチャヴィンスカ=ダヴィドヴァはワルシャワ(彼女はこの街を教育の観点で「欠陥のある都市」と呼んだ)で皆に開かれた図書館を設立することを呼びかけ、このような施設を作ることが「最も差し迫った公共の要求」の一つだと唱えた。図書館が労働者階級とともに「中産階級」にも開かれ、書籍と自己啓発によって「カード遊びやビリヤード、自転車ではなく、より重要な問題に頭を使うことができるようにする」ことの意味を強調した。1889年に嫁いだ夫、ヤン・ヴワディスワフ・ダヴィト(Jan Władysław Dawid, 1859-1914)とともに、教育に心血を注いだ。ダヴィトはポーランドにおける実験的教育学の先駆者であり、ドイツの大学で心理学・教育学、ワルシャワ帝国大学で法学を修めた。「O duszy nauczycielstwa(教育者の魂)」(1912)、「Nauka o rzeczach(物の科学)」(1892)、「Zasób umysłowy dziecka. Przyczynek do psychologii doświadczalnej(子どもの知的資源――実験心理学への貢献)」(1895)といった論文の著者で、移動大学でも講師を務めた。20世紀始めの10年間、シュチャヴィンスカ=ダヴィドヴァは夫が1900年に買い取った週刊誌『Głos』の運営・編集を手がけつつ、教育と社会活動への献身を続けた。1910年5月26日、マゾフシェ地方の村ロソシュ(Rososz)で井戸に飛び込んで自殺を遂げ、46歳の若さでこの世を去る。遺体はワルシャワのポヴォンスキ墓地に埋葬された。社会紙『新たな新聞(Nowa Gazeta)』は、故人の追悼欄で彼女を次のように称えている:
極めて感受性の豊かな性格、活力と熱意、行動への意欲にあふれたヤドヴィガ・シュチャヴィンスカ=ダヴィドヴァは、疲れを知らない勇敢な働き手として、人々の記憶に残るだろう。
想像が困難な過去
女性が高等教育を受けられるようにするために女性教師・女性活動家たちが重ねた努力の意味は、強調されるべきである。ここできわめて重要なのは、「女性の大学」という呼び名が、女性を主な対象とする移動大学の人的な構造だけでなく、授業内で論じられた女性への支援や女性解放という問題にも関わっていたことだ。女性解放運動活動家たちの教育への献身的な姿勢と不屈の精神、そしてフェミニスト団体の圧力のおかげで、私たちは今日、大学への進学が女性に許されていなかった当時の状況を、想像することさえ難しい、異常な事態として捉えるようになっている。ヤドヴィガ・シュチャヴィンスカ=ダヴィドヴァが創設した移動大学は、法律上認められていなかった教育を女性聴講生に授けるとともに、いわば教育の「孵化器」の役割を果たし、女性たちを外国の大学への進学へと導いた。このような道を歩んだ科学者の一人が二度のノーベル賞受賞者、マリア・スクウォドフスカ=キュリー(Maria Skłodowska-Curie, 1867-1934)だった。1905年、移動大学は認可を受けて学問学習協会(Towarzystwo Kursów Naukowych)へと改組され、ポーランドが独立を回復してからは自由ポーランド大学(Wolna Wszechnica Polska)へと発展した。ポーランドにおける秘密教育の伝統は、その後もポーランド人が直面した困難で時に過酷な経験を乗り越え、生き延びる。ナチスドイツによる占領期も、秘密の教育課程を組織することで移動大学は続いた。ポーランド人民共和国の時代、ヤドヴィガ・シュチャヴィンスカ=ダヴィドヴァと彼女の協力者たちの功績に導かれ、1977年、反共産主義活動家のための教育機関が設立される。この機関は移動大学と名付けられた。
出典:
H. Balicka-Kozłowska, "Babski Uniwersytet Latający(女性の移動大学)", "Stolica(首都)", nr 10, 1962; A. Muszczyńska, "Nieodkryte karty z życia Jadwigi Szczawińskiej(ヤドヴィガ・シュチャヴィンスカの生涯の知られざる頁)", Biografistyka Pedagogiczna(教育学の伝記), nr 1, 2017; L. Krzywicki, "Wykłady Latające. Poprzednicy Wolnej Wszechnicy Polskiej(移動する講義――ポーランド自由大学の前身)", "Ex Litteris Libertas: jednodniówka studentów Wolnej Wszechnicy Polskiej w Warszawie(Ex Litteris Libertas――ワルシャワのポーランド自由大学学生の1日行事)", Warszawa 1923; J. Myszkowska, Jadwiga Szczawińska-Dawidowa. Pionierce świetlanej przyszłości. Tom 1(ヤドヴィガ・シュチャヴィンスカ=ダヴィドヴァ、明るい未来の先駆者へ 第1巻)", Warszawa 2023.
執筆:マルツェリナ・オバルスカ(Marcelina Obarska)、2023年9月28日
日本語訳:柴田恭子(Yasuko Shibata)、2025年7月