ポーランドのクリスマス料理 〜入門ガイド〜
イエス・キリスト降誕の前夜、クリスマス・イヴはポーランドで最も大切なお祝いの一つで、料理の面でも、12月24日のディナーはポーランド人が最も重要とみなす食事の一つだ。ポーランドのクリスマス・イヴには、伝統にしたがって12種類の料理が用意される。全国でお馴染みの料理、各地域に根ざした料理、また季節を問わず食べられているものや、1年のうち、この日だけの楽しみになっている料理もある。どの料理にも肉は使われない。これらの伝統的な祝祭料理は、ポーランド料理の中核になる要素でもある。ポーランドのクリスマス・イヴと言えばこの料理!という12皿を紹介しよう。
キノコのスープ
キノコのスープ。写真:Wojciech Pacewicz / PAP
キノコのスープ(zupa grzybowa)は、ポーランドの食文化で重要な位置を占める、乾燥させた森のキノコで作られる。日本でポルチーニやセップ茸としても知られるヤマドリタケが1番人気で、ポーランド語では「ボロヴィク(borowik)」と呼ばれる。このキノコのスープによく細い麺や、「ワザンキ(łazanki)」という平たい、小さい四角に切られたパスタを加える。さらに少量のクリームが足されることも。ワザンキという名はイタリアのラザーニャ(lasagna)に由来し、普段の食事では、ザワークラウトとキノコを用いた主菜の付け合わせとしても登場する。
キノコのダンプリング入り、赤いバルシュチュ
ダンプリングの入った赤いバルシュチュ。写真:Zbigniew Lewczak / Getty Images
ビーツを用いた、鮮やかな真紅色が美しいスープ。辞書で「バルシュチュ(barszcz)」という言葉を引くと、二つの意味が載っている。一つは発酵液のスープ(zupa na zakwasie)、もう一つは温暖な気候で育つ大きな葉の植物、ハナウド〔英名はhogweedまたはcow parsnip〕だ。バルシュチュは、古くからスラヴ文化の一部をなしてきた数種のスープの総称とされているが、常にビーツが使われてきたわけではない。元来はハナウドで作られ、この植物をザワークラウトのように発酵させる必要があった。発酵により、今日の赤いバルシュチュ、また「緑のバルシュチュ(zielony barszcz)」とも呼ばれるスイバのスープのような爽やかな酸味が生まれた。クリスマス・イヴのバルシュチュには、ウシュカ(uszka)〔「小さな耳」の意味〕という、イタリアのトルテリーニに似た、キノコ入りのダンプリングが実になることが多い。
魚のギリシャ風
魚のギリシャ風。写真:Piotr Błowicki / East News
「魚のギリシャ風(ryba po grecku)」は人気の前菜。実はギリシャとは何の関係もなく、この名がどこから来るのかははっきりしない。たぶん、魚にトマトベースの野菜ソースを添える点が地中海を連想させるのだろう。実際、この料理はコルフ(Corfu)の「ブルデト(bourdeto)」という魚料理にちょっと似ている。スケトウダラやタラなど、白身の魚の切り身を揚げ、玉ねぎ、千切りのニンジン・根パセリ・根セロリ、トマトペーストにスパイスを加えた、とびきり美味しいソースで煮込んで作る。
鯉のフライ
パプリカと一緒にバターで揚げ焼きにした鯉。写真:Marcin Klaban / AW
ポーランドでは鯉(karp)の養殖は700年の歴史を有する伝統で、この魚は何世紀にもわたって王家の食卓を飾っていた。ポーランドのクリスマスの伝統で重要な位置を占めるようになったのは、第二次世界大戦後のこと。パイクパーチ(ザンダー)、ウナギやカワカマス等、いわば格が上の魚よりも人気があるのだが、「鯉は泥臭い」と思っている人が多いため、食卓に載せる上で最も問題になる料理でもある。この魚が好きな人は、小麦粉をまぶして揚げ、あたたかいザワークラウトとゆでたじゃがいもを添えていただこう。
鯉のユダヤ風
鯉のユダヤ風。写真:Grzegorz Skowronek / AG
クリスマス・イヴには鯉はメインディッシュのみでなく、前菜としても登場する。鯉を魚の出汁でゆでてゼリー寄せにし、アーモンド、レーズンと玉ねぎで甘みをつけた「鯉のユダヤ風(karp po żydowsku)」は、中央ヨーロッパに住んでいたアシュケナージ系ユダヤ人の伝統的な料理。
ニシン
ニシンの酢漬け。写真:iStockphoto / Getty Images
ニシン(śledź)は賑やかなパーティで一息つくにもってこいの一品だが、カトリックの宗教儀礼で定められた「節制」の期間中、肉の代わりにしかたなく食べるという人も。魚を食べる機会が少ない現在のポーランドでは、ニシンは文化的な葛藤を抱えつつ、重要な食材であり続けている。
ザワークラウト&キノコ
ザワークラウト&キノコ。写真:Marianna Osko / East News
日本でザワークラウトとして知られる酢漬けキャベツ(kapusta kiszona)は、ポーランドの食文化で大きな役割を持っており、とりわけクリスマス・イヴにはそれがよくわかる。ピエロギの具、ワザンキのソース、または森の干しキノコやエンドウ豆の付け合わせとして、ほとんど誰もがザワークラウトを炒め煮にする。やわらかくしたレーズンを合わせるのが好きな人も。ビゴス(bigos)の中心となる材料でもある。
ピエロギ
ピエロギ。写真:Monika Zbojeńska / IAM
ピエロギは間違いなく、最も有名なポーランド料理で、世界中で広く愛されている究極の家庭料理だ。ピエロギのみに人気が集まって話題になるため、外国人向けのポーランド料理の本に『ピエロギだけではないポーランド料理』というタイトルがつけられてもおかしくない。練り粉の生地で具を包む料理はほとんどすべての国で作られているので、ポーランド国外でも人気なのは、そう驚くことではないだろう。ピエロギは、手のひらサイズの生地でチーズ&じゃがいも、ザワークラウト&キノコ、肉、ほうれん草、レンズ豆、甘くしたカッテージチーズやベリーなど、美味しい具を選び、たっぷり包んだ料理。慣れ親しんだものとエキゾチックな要素が、常に完璧な釣り合いをとっている。
クティア
クティア。写真:Michał Kołyga / Reporter / East News
「クティア(kutia)」はクリスマス・イブの晩餐にのみ作られる古くからのデザートで、ポーランド東部の伝統ある一品。ゆでた未精製の小麦の実、ゆでたケシの実、蜂蜜、ドライフルーツまたは砂糖漬けのフルーツを少量の赤ワインに浸したもの、そしてアーモンド、ひまわりの種、くるみなど、さまざまなナッツや種子を混ぜて作る。その昔、クティアは料理としてだけでなく、スラヴ人の信仰とも関わりを持っていた。実はシチリアやギリシャの伝統にも似た料理が存在し、もとは古代に由来することがうかがえる。
マコヴィエツ(ケシの実のケーキ)
ルバルトゥフ風マコヴィエツ、マリア・シェイの菓子店、ポーランド東部ルブリン地方の街、ルバルトゥフ。写真:Wojciech Pacewicz / PAP
最も独創的で、おそらく最も議論を呼ぶポーランドのケーキと言えば、マコヴィエツだろう。シュトゥルーデルのような形をしたイースト生地のケーキで、細かくすりつぶしたケシの実、バター、蜂蜜、ドライフルーツとナッツを混ぜ合わせた、贅沢なフィリングを巻きこんで作る。他の形やバリエーションもあるが、このケーキがポーランドで最も愛されている、お祝いにふさわしいご馳走の一つなのは間違いない。
ピェルニク
昔ながらのポーランドのピェルニク。写真:Andrzej Zygmuntowicz / Reporter / East News
古ポーランド料理は生姜、シナモン、ナツメグをはじめ、異国のスパイスをふんだんに使うことで知られ、ジンジャーブレッドもその一つ。ポーランド語でピェルニク(piernik)と呼ばれるこの美しいケーキは、17世紀には既に作られていた。生まれ故郷はミコワイ・コペルニク(Mikołaj Kopernik/ Nicolaus Copernicus, 1473-1543)の街でもあるトルン(Toruń)で、ここにはジンジャーブレッドのミュージアムがあり、極上の焼き菓子を味わうことができる。昔ながらの伝統的なピェルニクは今も多くの家庭で作られているが、かなりの時間と注意を必要とする。生地は蜂蜜、バターまたはラード、砂糖、卵、小麦粉と数種のスパイスを混ぜて作る。ジンジャーブレッド特有の風味を引き出すため、焼く2-3週間前に生地を用意し、寝かせて熟させる。クリスマス・イヴの2-3日前に焼き上げておくと、ディナーの頃には理想的な味に。でき上がったピェルニクは横に切り、伝統的な製法のプラム・ジャム(powidła)を塗り、重ねて層にして食べる。長期間の保存が可能だ。クリスマスツリーの飾り付け用に、ジンジャークッキーも焼かれる。
ドライフルーツの「コンポット」
ドライフルーツの「コンポット」。写真:Damian Klamka / East News
ポーランド人はドライフルーツや燻製フルーツが大好きで、クリスマスの料理にもこれらのフルーツを用いる。ドライフルーツの「コンポット(kompot)」はクリスマス・イヴも終わりに近づく頃に供される、人気のある飲み物だ。プラム、りんご、洋梨、レーズンやアンズ等のドライフルーツや燻製フルーツを煮て作られる。かなりはっきりした(好き嫌いが分かれる)風味のほか、消化を促進する効果があり、たっぷりのご馳走を堪能した後、非常にありがたい存在だ。
執筆:ナタリア・メントラク=ルダ、2022年12月21日、改訂:2023年11月28日
日本語訳:柴田恭子(Yasuko Shibata)、2025年11月