発酵キャベツは、毎日の食事ではサラダにしたり、コトレト・スハボヴィkotlet schabowy(とんかつ)などのポーランド料理に添えたりする。具沢山のスープ、カプシニャクkapuśniakにも使われる。
ポドハレPodhale地方では、発酵キャベツ液を使ってカプシニャクの地元版「クファシニツァkwaśnica」を作る。クリスマスの時期には発酵キャベツをピエロギに詰めたり、きのこやレーズンあるいはえんどう豆と一緒に煮たりして、クリスマスイヴ料理の一つとして供される。
ビートの発酵液、ライ麦の発酵液 Kwas z buraków, kwas z mąki
ビートの発酵液もポーランドの味である。刻んだビートを塩水に浸け、調味料を加え、発酵させると健康な発酵液になる。この発酵液はポーランドの国民的スープである赤バルシチbarszcz czerwonyのベースとなるのだが、今でも家庭で作られている。「バルシチは家に常備すること。先のを使い切ったら、すぐに新鮮なものを発酵させること。」19世紀の料理本の著者はこう記している。ビートの発酵液は、塩水に西洋わさびの根、調味料あるいは根菜(セロリ、パセリ、にんじん)を少し加えると、さらに美味しくなるとも言われている。変わったところでは、生姜やルバーブなども合うという。これはシェフのヴォイチェフ・モデスト・アマロWojciech Modest Amaroによる提案で、そうやって作った赤バルシチは、わさび油と、フィロ生地で包んだクロケットを添えて供するという。
バロック時代のポーランドでは、セリ科の植物であるバルシチ・ズヴィチャイヌィbarszcz zwyczajny (Heracleum Sphondylium)の若芽も発酵漬物にしていた。そしてこれをライ麦の発酵液で味付けた。この植物を発酵食にする習慣は18世紀にはなくなったが、名前は残った。現代ではバルシチは、発酵ビートから作る赤バルシチ、発酵ライ麦から作るライ麦バルシチ(ジュルżur)というスープの名前になっている。
ジュルを作るのには粗挽きのライ麦が使われることが多い(大麦、オート麦の場合もある)。ジュルのベースとなる発酵麦の作り方はビートの発酵液の作り方と同じである。漬け汁にはニンニク数片、ローリエの葉、粒胡椒、オールスパイスも加える。「農村の人々の基本食となった発酵ライ麦のバルシチは、とても美味しくて健康にいい」という確信は今日も生きている。ウェムコ料理にはライ麦を牛乳の中で発酵させた独特のジュルがある。
地方の珍しい特産品にアカハツタケrydzの発酵漬物がある。主に南部地域(ポドハレPodhale地方、ベスキド・ニスキBeskid Niski山脈、ビエシュチャディBieszczady山地)で作られている。クラクフ近郊クシェショヴィツェKrzeszowiceで貴族ポトツキ家の料理長を務めたAntoni Tesslar(フランス出身)は、20世紀初めに書いた本『ポーランド・フランス料理Kuchnia polsko – francuska』に簡単なレシピを載せている。「アカハツタケは熱湯にくぐらせ、ざるに取って水気を切り、冷水をかける。小さな樽か鍋の中に並べ、塩を振り、香辛料少々を加え、スライスした白タマネギか小さなタマネギを丸ごと重ねる。白い布で覆い、木の蓋をして、上に石を乗せる。発酵中は冷所に置くこと。」この地方の特産品には発酵アカハツタケを加えたジュル・スープもある。
発酵漬物はだいたいどんな野菜からも作ることができる。さやいんげん、カリフラワー、ズッキーニ、トマト、かぶ、パプリカなど、他の発酵食のレシピもかつてはよく知られたが、今はあまり見られなくなった。
最後に、忘れてはならないのが、ズシャドウェ・ムレコzsiadłe mleko、つまり「酸っぱい」牛乳だ。新鮮な、つまり殺菌処理を行っていない牛乳を発酵させて作る伝統的な飲み物だ。牛乳の中に自然に存在する微生物の作用によって発酵が起こる。ズシャドウェ・ムレコと聞いて、ポーランド人が連想するのは夏の日と、ごく素朴な料理だ。例えばディルを添えた新じゃがのような。
執筆:Magdalena Kasprzyk-Chevriaux
日本語訳:YA、2018.01