春を表す、ポーランドの7枚の絵
「ああ、楽しき春よ!あなたはなんと美しく笑うことか」――18世紀ポーランドの詩人、エルジュビェタ・ドゥルジュバツカ(Elżbieta Drużbacka;1695-1765)はこの季節の本質をとらえ、わずか一行で明快に表した。生きとし生けるものの新たな始まりの季節、春の魔法を描き出す、ポーランドの画家たちの7枚の名画を見てみよう。
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ヤツェク・マルチェフスキ《春の雪解け(ザヴィホスト沿いのヴィスワ川)》1905年、写真:クラクフ国立美術館
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季節の変わり目、冬の力が衰え、暖かくなり始める頃、ポーランドは「早春(przedwiośnie)」と呼ばれる時を迎える。まだ春になりきっていないものの、もう冬ではない、そんな日々だ。この時期になると、雪がとけ始めてぬかるみとなり、川が増水する。ヤツェク・マルチェフスキ(Jacek Malczewski;1854-1929)の《春の雪解け(Wiosenne roztopy)》は、比類のない画力でこの時期の空気を伝えており、ブルーグレーの配色により、まるで冷たい湿気を骨の髄まで感じられるかのようだ。卓越したモダニズム画家、マルチェフスキがこの1905年の作品への着想を得たのは、ポーランド最長の川、ヴィスワ川が流れる、クラクフ郊外の別荘だという。
スタニスワフ・プストロコンスキ《春》
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スタニスワフ・プストロコンスキ《春》1900年、写真:クラクフ国立美術館
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この絵には青色がたくさん使われているが、冷たい感じはしない。裸で立つ女性がまったくもって快適そうにしている様子から、あたたかい夕べなのだろう。後ろ姿の美しさを強調する洗練された構図は、この1900年作の絵画のもっとも優れた特徴のひとつだ。
スタニスワフ・プストロコンスキ(Stanisław Poraj-Pstrokoński;1871-1954)は、この作品を《春(Wiosna)》と題しており、白樺の木にもたれかかる女性が、この季節の擬人化である可能性を示唆している。興味深いことに、彼女の髪には白樺の葉、または小苞(芽やつぼみを包む小さな葉)が飾られているように見える。ただ、葉や小苞が木々から落ちるのは、夏も終わる頃。では、なぜこの女性が春を象徴しているのだろうか?これには、言語学的な説明が必要だ。16世紀、チェーザレ・リーパ(Cesare Ripa;c. 1555-1622)によって書かれた、芸術作品の中のさまざまな象徴についての古典的な本『Iconologia(図像学)』によれば、翼は、春を擬人化した女性の属性だという。一方、「小苞」はポーランド語では「スクシデウカ(skrzydełka)」と呼ばれ、これは「小さな翼」を意味する。つまり、小苞はまさに、春を表すことになる。
ヤン・スタニスワフスキ《ライラック》
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ヤン・スタニスワフスキ《ライラック》1901年、写真:クラクフ国立博物館
それは五月のこと
サスカ・ケンパはむせかえるような
緑のライラックの香りだった
(To był maj
Pachniała Saska Kępa
Szalonym zielonym bzem)
これはポーランドの1974年のヒット曲、人気ロック歌手マリラ・ロドヴィチ(Maryla Rodowicz)が歌う「Małgośka(マウゴシカ)」の冒頭部。歌詞は、すぐれた作詞家・作家で、ワルシャワのサスカ・ケンパ(Saska Kępa)地区の有名住人でもあるアグニェシュカ・オシェツカ(Agnieszka Osiecka)によって書かれた。
素晴らしい香りと華やかな外見を合わせ持つライラックの花は、ポーランドの春でもっとも大切にされている現象のひとつだ。この歌が発表される73年前に高名な風景画家、ヤン・スタニスワフスキ(Jan Stanisławski;1860-1907)が生み出した美しい作品《ライラック(Bzy)》を見れば、咲き誇るライラックの花が、いつの時代もポーランド人によって愛されてきた、春の風物詩だったことがわかるだろう。
レオン・ヴィチュウコフスキ《春――芸術家のアトリエの中》
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レオン・ヴィチュウコフスキ《春――芸術家のアトリエの中》1933年、写真:レオン・ヴィチュウコフスキ美術館、ビドゴシュチ
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ポーランドでもっとも評価されているモダニズム画家のひとり、レオン・ヴィチュウコフスキ(Leon Wyczółkowski;1852-1936)の1933年の作品は、《春――芸術家のアトリエの中(Wiosna – wnętrze pracowni artysty)》と題され、ポーランド中北部の村、ゴシチェラツ(Gościeradz)にある彼の邸宅の内部が描かれている。ヴィチュウコフスキは、この作品について次のように述べている:「春は、その香りと風とともに家の中に入ってくる」。
たしかに、花を咲かせた木の晴れやかな明るさと、風にひらめくカーテンを見ただけで、新鮮な、あたたかい空気の匂いを感じるような気がするだろう。暗い色のアームチェアと窓辺に置かれたままの本は、画家が、あまりにも気持ちのよい春の一日、それを心ゆくまで楽しもうと、思わず外に飛び出していったことを示唆している。
ユリアン・ファワト《家と木々のある風景》
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ユリアン・ファワト《家と木々のある風景》1911年、写真:クラクフ国立美術館
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この絵は優れた水彩画家、ユリアン・ファワト(Julian Fałat;1853-1929)が、1911年、山間地の村ブィストラ(Bystra)に引っ越してから描いた作品。彼がその地に落ち着いてから好んで取り上げたテーマである、地方の田園風景と思われる。《家と木々のある風景(Pejzaż z domem i drzewami)》と題されたこの作品で、ファワトは自分が日本美術に魅せられていることを示している。それは、彼の業績として知られている、冬のブィストラの風景画など、他の多くの作品にも見てとれるものだ。イレナ・コッサコフスカ(Irena Kossakowska)は次のように書いている:「日本美術の影響は、『空っぽの』空間――白い面――が積極的な役割を担う、非対称的な風景画にその姿を現す〔…〕」。
ロマン・コハノフスキ《春》
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ロマン・コハノフスキ《春》1900年頃、写真:pinakoteka.pl
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ロマン・コハノフスキ(Roman Kochanowski;1857-1945)はポーランドでもっとも評価されている風景画家のひとり。彼はクラクフ近郊の数々の田園風景を描いており、これもそのひとつと思われる。1900年頃に描かれた《春(Wiosna)》は、世紀の変わり目に彼の作品に起こった様式の変化を示している。より漠然とした描き方を、詳細なものに変えたのだ。この風景では、動きのある構図は、春が興奮とともにやってきた混乱を反映しているかのよう。一方で、筆使いが心地良い、夢見るような雰囲気を呼び起こしている。
テレサ・ロシュコフスカ《春》
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テレサ・ロシュコフスカ《春》1932年、写真:ワルシャワ国立美術館
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この作品の作者、テレサ・ロシュコフスカ(Teresa Roszkowska;1904-1992)は、ルネサンス絵画にインスピレーションを得たことで知られる。それは彼女の1932年の作品《春(Wiosna)》、特に彼女が生み出した視覚的な距離の錯覚、そしてこの絵の寓意的な特徴に見てとることができる。
この絵は、古代ローマの花と春の女神、フローラ(Flora)として擬人化された春を描き出している。どこからそうわかるのだろうか?それは、一番上の人物が頭にいただく花の冠(フローラはローマ時代の貨幣に、このような冠とともに描かれていた)、彼女が手にしている花、そして、伝統的に神々と結び付けられてきたテーマである農作業が描かれる背景だ。抱き合うカップルの様子からも、古典的な春の描写とこの作品を結び付けることができる。なんといっても、春は恋愛の季節なのだ!これらすべてが興味深いアール・デコ調で表され、《春》は素晴らしい、ユニークな芸術作品となっている。
執筆:マレク・ケンパ(Marek Kępa)、2018年3月
日本語訳:柴田恭子(Yasuko Shibata)、2024年4月